〈レジ袋〉
日本でも有料化が進んでいるスーパーや商店でもらうレジ袋。90年代にバングラデッシュで毎日900万枚のレジ袋が出回っていたのを、環境保護団体がそれにストップをかけたのがレジ袋廃止運動の最初らしい。
最近の調査では、フランス人の83%が無料レジ袋の廃止を望んでおり、2003年に全国で150億枚(1人平均200枚!)のレジ袋が利用されていたのが、2004年には20%(原油1000トン相当)減ったものの現在も120億枚が出回っている。大手スーパーなどはレジ袋を有料にするチェーンや、頑丈な買い物袋を販売しレジ袋廃止運動を手がけているが、町の小さなスーパーや商店でのレジ袋の完全廃止はむずかしそう。環境保護団体〈Amis du vent〉によれば、自然の中にあふれる何千億枚のビニールのレジ袋は、地中で埋もれたまま消滅するまでに400年はかかるという。レジ袋は海中にも散乱し、それらを呑み込み腸閉塞で死ぬクジラやイルカなども出てきている。
2005年11月末、国民議会は、ビニール製レジ袋を2010年に全廃する法案を承認しているが、はたして実現可能? そのあとは、 昔のように紙袋を使うようになるのだろうか?
だが紙製造にはビニールより多い熱量を要しガス排出量もそれだけ多いということ。理想案として、微生物による分解が可能なトウモロ コシやジャガイモなどを原材料にしたバイオ袋を考案すべきだというが…。
〈収集〉
現在、各自治体がポリエチレンのゴミ箱を住民に配給(村などでは一定の場所に設置)しているが、パリ市は2002年から住民に、生ゴミは蓋が緑色のゴミ箱、ガラス・ビン類は蓋が白いゴミ箱、新聞雑誌・金属・容器包装類は蓋が黄色のゴミ箱というように3種類に分別させるようになった。8割以上の所帯は少なくとも2種類のゴミ箱が与えられており、個人またはアパートの管理人などが定期的に歩道に出している。粗大ゴミや家具、電化・パソコン類などはパリでは〈3975〉に連絡すれば無料で回収してくれる。パリではゴミの回収は夕方。ラッシュ時と重なり、交通渋滞のもととなっている。
パリの街中に置かれたガラス・ビン回収箱。〈リサイクル〉
この印は、食品から日用品までさまざまな容器包装に付いているが、これはリサイクルされることを意味するのではなく、生産業者がゴミ収集・処理分担金(Eco-Emballages)を自治体に払い込んでいることを示す印だ。住民による分別が少しずつ一般化し、2004年には家庭ゴミの6万8000トン(11%)が再利用された。
分別工場では、新聞雑誌やプラスチック類などリサイクルできるゴミが選り分けられた後、金属類は缶や金具類に、プラスチック類は合成品(例えばペットボトル14本分で1着の合繊ジャケットができるそう)に、紙類はトイレットペーパーやジュース・牛乳パックなどに再生される。生ゴミも含め再生不可能なゴミは焼却所に送られ、焼却熱は都市暖房に利用されるほか、残留物は道路の補修材として利用されるが、原油の高騰や廃棄ガス公害にも対処すべく、ゴミのコンポスト化(堆肥化)やメタン化による生物ガスなどによる代替エネルギーに取り組むリサイクル産業が待たれている。
リサイクルに回される紙類
C: SYCTOM/Patrick Tselli
ゴミの中で危険性のあるものの一つ、電池。フランス人は1年間に7億2000万個の電池を消費しているが、3個のうち2個は生ゴミといっしょに捨てている。2001年から電池を捨てることは法律で禁じられており、スーパーや商店は使用後の電池を回収するべきとされている。だが一般市民への働きかけは皆無に近い。電池は古くなると金属製の被覆が酸化しカドミウムや鉛、ニッケルなどが流出し動物や野菜に有害となる。焼却も大量な有毒ガスを大気中に排出することになる。電池に含まれる亜鉛やマンガン、水銀などのリサイクル工場もあるが軌道にのせるには時間がかかりそう。
「フランス人はお国まかせ」
ガルニエ美樹さん(在仏8年、子供2人、12区アパート住い)
「パリに来たころは、街角にある大きな回収ボックスに空きビンだけを捨てていました。ゴミが分別されるようになってからは、リサイクルできる物はアパートのゴミ収容室のゴミ箱に入れ、生ゴミは小袋に入れてダストシュートに入れています。週に2回立つ朝市では、魚以外の物はなるべく紙袋に入れてもらい、大きな手さげカバンで運んでいます」「2年に一度は、鳥取の田舎の実家に帰郷。日本ではほとんどの生鮮食品が発砲スチロール皿に盛られているので、空き缶やビン、牛乳パックなどと同様によく洗ってスーパーにある回収ボックスに入れます。わたしは納豆が好きなんですが、それを包んでいるビニールもよく洗わないといけないので、おっくうになりあまり食べなくなりました」「週1回、〈燃えるゴミ〉〈燃えないゴミ〉〈小型破砕ゴミ(電球やシャンプーのプラスチックビンなど)〉に分けて、市認定の炭酸ガスの出ない半透明のビニール袋に入れて歩道に出せば、町内の回収トラックがもって行ってくれます。これに比べると、フランスの分別法はまだずっといいかげんだと思います」「最近母は、洗濯機くらい大きい生ゴミ処理機(約13万円)を買い、毎日生ゴミと、チップと呼ばれるおがくずみたいな薬剤を入れて撹拌させます。できた土の中には微生物が入っていて、他の土と混ぜて袋に入れ20日間ほど寝かせておくと、サラサラのふわふわした土が2週間で2リットルほどできます。母はそれを庭にまいてきれいな花を咲かせています。ゴミにお金と時間をかける日本人と、お国まかせのフランス人との違いはこのへんにあるのでは?」