精神と肉体の親密な一体化。 “Bernard Faucon”

 今年56歳のフランスの写真家、ベルナール・フォコンの、1976年から95年までの回顧展。
 第一部は、等身大の少年の人形たちが、フォコンの故郷、南仏の風景の中で遊ぶ、初期のシリーズ〈学校休暇〉だ。人形たちは、一部本物の少年を交えて、海岸で寝そべったり、雪合戦をしている。昔のグラビア雑誌のような、郷愁を誘う少しざらついた色、計算された場面設定と構図に感心するが、息苦しさがつのってくる。本物に近いだけに、ニセの現実感がより強く押し出され、だんだん居心地が悪くなる。
 〈部屋〉シリーズで、その違和感はますます強くなる。大きなベッドに集団で半裸で眠る少年たちが、入り口から入ってくる光に目覚まされ、ずんずん大きくなる光を恍惚として見入るという、パルコのコマーシャルビデオがある。生き物のように入り込む光は、神か、キリストか、精霊か。
 大学で哲学と神学を学んだという経歴が納得できる。フォコンの作品は、宗教的なのだ。しかも、どこかいかがわしい。フォコンには、作品から宗教性が感じられたパゾリーニを、もっと俗っぽくしたようなところがある。
 上半身裸の美少年と、血の流れる風景をセットにした〈偶像と犠牲〉シリーズは、美しくも残酷、ミスティックで少しキッチュだ。西洋の残酷な宗教画を見て興奮した、三島由紀夫の「仮面の告白」の主人公の感性に近い。
 心に浮かんだ言葉を手書きにして拡大し、風景の中に置いた〈エクリチュール〉シリーズ。言葉が、啓示のように風景から浮かび出ている。
 〈イメージの終焉〉では、拡大された子どもの体の一部に、極小の手書き文字が浮かぶ。この後、フォコンは写真を撮るのを止めてしまう。精神と肉体の親密な一体化のあとは何もいらない、というかのような、遺書のような作品群だ。
 地下には、フォコンが制作に使った南仏の小別荘の内部が再現されている。形而上的なものを求めたかにみえた写真家の、思い出が詰まった、うんと人間臭い空間だ。彼の写真の人工的な世界を見た後で、その落差のなんと強烈なこと!(羽)


La Maison Europeenne de la Photographie :
5/7 rue de Fourcy 4e 3月5日迄(月火休)
Plume Galerie et Librairie  近頃ポンピドゥ・センターの北にギャラリーが増えつつあるが、その中でもちょっと気になるモンモランシー通りに、昨年12月オープンしたのが〈プリュム・ギャラリー〉。仏文学と美術史を学んだという若く美しいキュレーターのヴィルジニー・プロンジョンさんがオーガナイズするこの空間には、「アートと共に文学を感じる場であって欲しい」と彼女がセレクトした本も売っている。少なからずも無駄がなく秀逸なチョイスの豪華装丁の美術、写真、デザイン、建築本、そして美術に絡む読み物は、美術ファンへのプレゼントにも喜ばれそうだ。
 ここで紹介される作家たちは、表現手段は違っても各々がしっかりとした独自の世界をもつ、骨太な現代アーティストばかりである。
 次期2月7日から予定されるのは、元モデルのジェレミー・バロワの写真展。ザッピングされるテレビ画面のように粗い粒子で捉えらたモノクロ、カラー 写真の数々は、彼の脳裏を横切る記憶や軌跡を瞬間現場として覗いているかのようで面白い。
 絵画、写真を中心に今後予定される作家たちはどれも毎回違った志向であるが、展示する側のしっかりと一貫した視点が感じられる、これから期待のできるギャラリーである。(久)

48 rue de Montmorency 3e
01.4574.5419 火~土/11h-19h
●Henri Cartier-Bresson (1908-2004)

 20世紀写真界巨匠の一人、カルチエ=ブレッソンが1931~99年にかけヨーロッパ及びアメリカにて撮ったポートレート写真展。ポートレートとしてまとまった彼の作品が大々的にフランスで公開されるのは今回が初めて。60年代末より公式には写真を撮るのを やめ絵を描いていたカルチエ=ブレッソンだが、レンズを通して被写体の内側にある「裸」を捉える眼差しは少しも変わっていなかった。エディット・ピアフ、トルーマン・カポーティー、サルトル、マリリン・モンローなどが、写真家の存在を忘れたかのような一瞬を見せる。4/9迄(月火休)。
Fondation Henri Cartier-Bresson :
2 impasse Lebouis 14e

●Victor HUGO (1820-1885)
 メゾン・ド・ヴィクトル・ユゴーが新たに購入した小説「海に働く人びと」(1866年)特別版により、未発表であったユゴーのデッサンを公開。ジャージー島での国外追放生活を送っていた時期に『海』をテーマに描いたもの。「海に夢遊しながら味わうこの上なく素晴らしい孤独感」と喩えたユゴーは、にわか雨、嵐、強風と、一刻も同じ顔を見せない激しいジャージーの海景色を白い紙にインクで描画した。
3/5迄(月休)。
Maison de Victor Hugo : 6 place des Vosges 4e

●Bijoux de Stars
 グレース・ケリー、ジョーン・クロフォード、ジャクリーヌ・ケネディ、ロレッタ・ヤング他、20世紀のハリウッドスター及び上流階級が常に身につけていた宝石の数々。ニューヨーク、ナショナル・ジュエリー・インスティテュート所蔵の名作、傑作200点以上が展示される。6/25迄(月休)。
Musee Carnavalet : 23 rue de Sevigne 3e

●Pierre KLEIN
 『パリカラー』というテーマでパリの街中を鮮明に切り抜きコラージュのように撮った写真展。ジャン=ポール・グードとの出会いにより刺激されたスタイリスティックな視覚探求は、父ウィリアムの写真世界とはまったく違った視点で展開する。3/5迄(月火休)。
La Maison Europeenne de la Photographie :
5/7 rue de Fourcy 4e

●Pierre BONNARD (1867-1947)

 修復工事のため2年間閉鎖していたパリ市近代美術館の再オープン第一弾としてボナール展。「モダン」をコンセプトに世界中から厳選された絵画、デッサン90点は、見る側を抽象への境目まで導く 。2/2~5/7迄(月休)。
Musee d’Art moderne de la Ville de Paris :
11 av. de Prsident Wilson 16e


 

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