記憶と忘却の底。 Christian BOLTANSKI

 記憶とは何だろう。あるいは忘却するとはどういうことか。すぐれて今日的な問い、例えば、戦争の記憶、虐殺の記憶、従軍慰安婦にされた女性達の記憶、あるいはこうした出来事を忘却しようとすることは、どういうことなのだろう。そのことを常に問いかけてくるのはボルタンスキーの仕事である。
 最初の部屋には、メンシュリッヒ(人間的という意/独語)と題された部屋だ。無数の白黒の写真が飾られ、淡いランプで照明されているだけだが、その淡さは、私たちを過去という記憶の淡さへ導く。まぜこぜに掛けられた写真は、大半がすでに亡くなり、自己証明が不可能な不特定の、無名の、あるいはSS (ナチス親衛隊員) やフランコ派の人々の肖像である。多くのものはピンボケであったり、特定しがたく、また個々の写真そのものが優れているというわけでもない。それはイメージ全体として、写真の持つ実証的効果をフルに発揮しながら、良き人も悪しき人もともに、彼らの存在の出来事を証しているのだ。つまり、忘却の不可能性を暗示しているのではないか。
 第三室は、新生児を保護する無菌ボックス、あるいは子供のベッドのような寝台が、やはり淡いランプに照らされている。それらは人間の生誕を垣間見させると同時にその子らの死をも想起させる。シンプルな寝台の形と誰もいない寝床が棺をも連想させるからだ。
 階段を下りると、普段は倉庫として使われている部屋に、子供たちの畳まれた衣類が棚に無数に積まれている。いなくなったものの抜け殻のように。
 最後は、紛失した品物の整理棚である。様々なところで忘れられたものが陳列されている。ある日、それらが忘却物でなくなる日が来るのを待っているように。
(kolin)
*Musee d’Art moderne de la Ville de Paris
10月4日まで。


マン・レイ写真展
LA PHOTOGRAPHIE A L’ENVERS
 マン・レイの写真は誰でもどこかで必ず見かけたことがあるはず。現在、500 点にも上る資料を一堂に集めた回顧展がグランパレで開催中だ。
 若いアメリカ人のマン・レイがパリに渡ったのは20年代。アーティストを目指していた彼がポートレートやファッションの写真を撮りはじめたのは生活のためだったという。商業カメラマンとして成功しながらも、「写真はアートではない」と公言していた彼は、目の前のものをただ写し取るだけの写真には満足できなかった。ルール無視・何でもありの実験的な暗室作業で数々のテクニックを生み、この職業写真家はとうとう写真にアートの座を与えてしまった。
 ソラリゼ−ションや多重露光などイマジネーションあふれるオリジナルプリントの美しさはもちろん、隣に並ぶコンタクトプリントから引伸し時のテクニックが手に取るように分かり、彼の探究心と創造性、そして繊細さがじかに感じられる貴重な展覧会だ。 (仙)
*グランパレ (火休) : 6月29日迄


● Max ERNST〈彫刻・絵画〉
1913~74年に制作された彫刻 110点とコラージュ・絵画約15点を年代順に紹介。
7/27迄 ポンピドーセンター(火休)
● PICASSO〈コラージュ〉
1912年、友人ブラックが始めた紙のコラージュ。ピカソはこの新しいアートに魅了され次々と作品を残した。6/29迄
Musee Picasso : 5 r de Thorigny 3e (火休)
● Richard MORTENSEN 〈同時展〉
1993年に歿したデンマーク幾何学抽象の雄。自由な発想による線、洗練された色彩のコントラスト。油彩、グアッシュ、インク、50年代以降の作品。6/20迄
Galerie Denise Rene Rive Gauche : 196 bd St-Germain 7e / Denise Rene Espace Marais : 22 rue Charlot 3e (14h-19h日月休)
● Eugene BOUDIN (1824-1894)
ノルマンディーやブルターニュの海辺へ誘う印象派画家の回顧展。7/8 迄
Galerie Schmit : 396 rue St-Honore1er
●〈20世紀のイコン〉
バルチュス、シャガール、リヒテンシュタイン、マグリット、ピカソ等15作家の作品。9/12迄 Galerie Piltzer : 16 av Matignon 8e
● Henri CERNUSCHI (1821-1896)
収集家である美術館創立者へのオマージュ。コレクション中の主要傑作 135点。6/22迄 (10h-17h40月祭休)
Musee Cernuschi : 7 Av. Velasquez 17e
●〈ダリと風景〉
オリジナル作品24点。6/24迄
Maison de la Catalogne : 4/8 cour du Commerce St-Andre 6e (15h30-19h)
● Andre THOMKINS (1930-85)
ルツェルンに生れベルリンに死す。同時にビューイ、スポエリ他、彼の友人アーティスト達の作品とデッサン、版画、オブジェ等も展示。
スイス文化センター: 38 rue des Francs-Bourgeois 3e (水−日14h-19h) 6/28迄
Galerie Claudine Papillon : 16 r.des Coutures-St-Gervais 3e (火−土11h-19h) 6/27迄
● Brigitte TERZIEV 〈彫刻〉
1943年パリ生れ。1997年ブールデル賞受賞。土や金属の素材や人間のフォルムが表す不安や苦悩。20点。7/5 迄
Musee Bourdelle : 18 rue Antoine-Bourdelle 15e (10h-17h40 月休)
●ドラクロア後期作品展
ルーヴルには展示されていない晩年(1850-63)の作品90点とデッサン約30点。
7/20迄 グランパレ (火休)
● Supports / Surfaces の時代
1966年からの約10年、タブローの伝統を解体、再構築しようとした作家たち。ビューレス、カーン、ヴィアラ他ポンピドーセンターのコレクションから。8/30迄
ジュー・ド・ポーム(水-金12h-19h/土日10h-)

 

 


 

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