ドイツにおいての森、それは日本の風土にたとえていえばむしろ樹海なのだ、ともいわれる。何処までも生い茂る樹々が立ちふさがる、鬱蒼とした森。そういう土壌と、戦後のドイツの、その過去が無言に支配する空気の中、そこの土地に育った芸術家たちの、自身を客観的に見つめる冷徹なまでの視点は、直接的で、あくまでも硬質なものである。そこにはもちろん、戦前からのドイツ・モダニズムの流れも見える。 けれど無駄を削ぎ落としたその語り口の内側に窺える、感情の生々しさは、生命体のエロスとでも言えるものを感じさせ、その、自然のロマンティスムが溶け合うような表現に、森の人としての真髄を見せられる思いがする。 Pina BAUSCH, Sacha WALTZ, Raimund HOGHE…、彼らの仕事はここパリでも定期的に観ることができる。それぞれの「ひととして在ること、生きて行くこと」「生を受ける者としての記憶」を求めての歩み、そこに立ち現れる、鮮烈な、そしてデリケートな表情は、同じくそれぞれに生きて行く多くの観客を惹きつけてやまない。(珠) |
Sacha WALTZ |