ベシェやローチも出演。
パリでジャズを聴くところ、といえば、サンジェルマン、サンミッシェル界隈が、日本でも広く紹介されている。よく知られていたのは、50年代、さまざまな録音もされたという〈Le club st-Germain〉であった。この街が持っていた雰囲気が、「パリのジャズ」という、ひとつのイメージを作り上げた。現在でも、この界隈では、ソロからビッグバンドまで、毎日演奏が行われている。ビーバップだけではなく、ディキシー、スイングと、内容も幅も広い。
かつてはシドニー・ベシェや、マックス・ローチなどが出演したのが〈Le Bilboquet〉。今は亡きミュージシャンの面影を追ってこの界隈に辿り着くもよし。しかし、アラン・ジャン=マリ、ジョルジュ・アルバニタスと、演奏しているのは、あくまで今を生きるミュージシャンであることをお忘れなく!
Le Bilboquet :
13 rue Saint-Benoit 6e 01.4222.5109
Le Caveau de la Huchette :
5 rue de la huchette 5e 01.4326.6505
Le Petit Journal saint-michel :
71 bd Saint-Michel 5e
01.4326.2859 www.petitjounal
saintmichel.com
JAZZ-ROCK
ジャズだけにこだわらない。ジャズをジャンル別で捉えていくと、必然的にフュージョンという分野が生まれてくる。もちろん、時代背景も影響して、今ではむしろ、ジャズロック、ニュージャズなんて呼び方の方が多数派かな。何をどう定義するかが、ジャズの上でいつも問題になっている。「これってジャズなの?」という言葉をよく耳にするはずだ。パリだからこそ、「フュージョン=融合」の意味を含むジャズを聴いてみよう。
かつてはチェット・ベイカーなどがメインだった大御所〈New morning〉。今、プログラムの半分以上は、ジャズのハーモニーにアフロキューバンを合わせたマラカ、ジプシーの血をひき、マヌーシュ・ジャズの名手であるビリー・ラグレーン、ブラジルのオーケストラ・ド・フダ、などが出演。ジャズだけにこだわらないパリっ子が集まってくるわけだ。また、ジャズミュージシャンも、ボサノバを多くレパートリーに入れるようになったため、〈Le Blue Note〉では「PARIS-BRAZIL」なんてプログラムもある。フランスのサックス奏者ジュリアン・ルローの、テクノっぽさを加えた演奏や、スイスのピアニスト、ウリ・ケインの今までにないアイデア溢れたリズムパターンも聴きごたえがある。
Julien Lourau “Gambit”
Le New morning :
7/9 rue des Petites-Ecuries 10e 01.4523.5141
Le Baiser sale :
58 rue des Lombards 1er 01.4233.3771
Le Blue Note :
14 rue Muller 18e 01.4254.6976
La Fontaine :
20 rue Grange aux Belles 10e 06.8816.2627
IMPRO
パリの即興派も、まだまだ燃えている。 即興こそがジャズのエッセンス、という意見が半数を占める一方、インプロビゼーションという分野、いつも裸のままで人目にさらされているむきがある。しかし、世界から集まるインプロバイザーの歴史的密度の濃さからみて、パリは重要な位置を占めているはずだ。
インプロの老舗といえる〈Les Instants Chavirés〉は、一時に比べると客足が衰えつつある、との声を聞くが、最近の、モントルイユへのアーティスト民族大移動が、活気溢れる場への再生につながることを期待したい。演奏場所とそこへ集まる人々が一つの世界を作っている、という〈Les Voûtes〉が、話題になっている。周辺にアトリエをかまえているアーティストたちの溜り場ともいった雰囲気の中、毎回興味深いプログラムだ。〈Les Allumes du Jazz〉というインプロを中心にしたフリーペーパーもある。かなりマニアックな趣ではあるが、なかなかどうして充実した内容。最近は、エレクトリックな機材を多用したミニマルな知的派が活躍するものの、サックスのドーニク・ラズロやジェフ・シカール、トランペットの沖至、ベースのクロード・チャミチャンなど、パリの即興派、まだまだ健在。
Les Instants Chavires
: 7 rue richard-Lenoir, 93100 Montreuil
01.4287.2591
Les 7 Lezards
: 10 rue des Rosiers 4e 01.4887.0897
Les Voutes
: 19 rue des Frigos 13e www.lesvoutes.org/
Le Studio 14 Paradis
: 14 rue Paradis 10e
Les Allumes du jazz : www.allumesdujazz.com
MODERN
今、パリで活躍しているジャズミュージシャンを聴きに行きたい。 ゆったりとした気分でムードある夜のジャズを、というよりは、「今パリで活躍しているホットなミュージシャンを聴きたい。しかも、何か新しい試み、エナジーを感じたい」という場合、1区のシャトレ界隈に行くのがいいだろう。
〈Le sunside〉、(火事のため3月まで移転中)や〈Le Duc des Lombards〉では、サックスとトランペットのベルモンド兄弟、ドラマーのダニエル・ユメール、人気上昇中ピアニスト、バティスト・トロンティニョンやマニュエル・ロッシュマンなど、ベテラン、若手を問わず、そして国外の有名ミュージシャンを身近で聴くことができる。また、〈Le Caveau
des oubliettes〉では、楽器を持参するとステージで演奏できるジャムセッションが毎週あり、演奏が行われる地下は熱気でむんむん。
今、世界の主な都市で、話題のミュージシャンたちを、一晩で異なる会場でまとめて聴くことができるのはパリだけだろう。聴きに行く側としては、今宵どのコンサートに行こうかと、時々選択に迷ってしまうこともある。そんなうれしい悲鳴の反面、ミュージシャンの契約の上で、パリ市が主催するコンサートとクラブ主催側、チケットの値段の格差が問題になっていることが、パリの内情であることも頭に入れておきたい。聴く側と、聴かせる側のエナジーが、活気あるジャズの空間を作り上げることを信じたい。
photo:K.Shigeta
Le Sunside-Le Sunset
: 60 rue des Lombards 1er 01.4026.2125
(3月末まではEspace Victoria : 19 av.Victoria 1er)
www.sunset-sunside.com
Le Duc des Lombards
: 42 rue des Lombards 1er 01.4233.2288
Le Caveau des oubliettes
: 52 rue Galande 5e 01.4634.2309
Autour de Midi…et minuit
: 11 rue Lepic 18e 01.5579.1648