赤ちゃんは日々進化する。髪の毛はふわふわ、まつげや爪はたちまちま伸びていく。顔つきもサル科からヒト科へようやくヴァージョンアップしてきた。 ふとクファンの中にいる娘をのぞき込むと、私を見てふにゃっと笑った。俗にいう「生理的微笑」なのかもしれないが、私にはミラの初めての人間的な笑いに思えた。うれしい反面、本当に人を一人産んだのだという空恐ろしい実感も加わり、思わず鳥肌が立った。 生後一カ月が過ぎ、近所にPMI(母子保護相談室)という、無料で子供の定期検診などを行う公共施設があることを知った。ここでミラの身長と体重を測ってみたら、母乳はしっかり足りていることがわかりほっとした。ミラはジルに似てなかなか背が高い。スタッフが親切そうだったので、「授乳の間隔が短くて困っている」と悩みを打ち明けてみると、助産婦が母子宅まで出張し授乳指導をする無料サービスがあるから申し込めと言う。早速申し込むと、数日後には助産婦さんがやって来て、具体的な授乳のコツや母乳育ての心構えなどを伝授してくれた。出産間もない赤ちゃんとの外出は容易でないし、授乳指導は普段授乳を行っている場所でされるのが理想だろうから、これは大変利に適ったシステムだ。おかげで翌週からは、授乳間隔を平均3時間ほどとることに無事成功した。 困った時のPMI頼みである。(瑞) |
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ロバート・ウィルソンの『寓話』展。 | ||
●Les Fables de la Fontaine コメディー・フランセーズで上演中のラ・フォンテーヌ作『寓話』を演出したアメリカ人演出家ロバート・ウィルソンは、役者に演技をつけるだけでなく舞台美術や照明のデザインなど舞台全体の「美」を演出する術に長けている。そのウィルソンが、再びラ・フォンテーヌの『寓話』を展覧会用にデザイン・演出した。 それほど広くない会場の床にプリントされた狼のいたずらっぽい足跡に導かれるように、私たちはウィルソンの想像と創造の世界に入っていく。今回の展覧会用にウィルソンが描いたという動物たちのデッサンが色とりどりに壁を飾る。舞台をすでに見ている人にはお馴染みの動物や人物たちは平面化されてしまったけれど、舞台よりもいっそうとぼけた風貌と豊かな表情で私たちに「どう?」と語りかけてくる。第1展示室の真ん中を貫く鏡の通路では、動物たちとかくれんぼをしているような楽しい錯覚に襲われ、第2展示室では、子供たちも大人たちも立体的に再現された「アリとキリギリス」や「都会のネズミと田舎のネズミ」「キツネとコウノトリ」などいくつかの話のシーンを小さな丸窓から覗いて物語に思いをはせる。 やっぱり!と脱帽したのは、相変わらずスタイリッシュで完璧なウィルソンの演出。視覚はもちろんだけれど、劇中の音や役者たちの台詞、そして物語の朗読などがうまく混ざり、聴覚への刺激も心地よい。劇を見てから展覧会に行くか、それともその逆? この展覧会にも子供たちの遊び心をくすぐる要素がたくさん詰まっている。7月24日まで(海) Fondation Pierre Berge Yves Saint Laurent : 3 rue léonce Reynaud 16e 01.4431.6431 火-日 11h-18h。 2.50€/5€(10歳未満は無料) |
●L’Epaule nord ミシェル・ロービュが率いるテュラック劇団が創り出す想像の国テュラキを一度でも観たことがある人は、「ペンギンは冷蔵庫に入れたまま忘れてしまった天使」と言われてもうなずくようになってしまう。 こわれかけた乳母車やじょうろ、ソレックスなどが俳優たちの手にかかると不思議な存在感を持ち出し、舞台の上に、常軌をはずれ、唐突でいながら詩的な文明が誕生する。今回は、すべてが逆さまになっている氷山への果てしない旅。大人も子供もいっしょに楽しめる。(真) 2月6日まで(月・火・金 20h30、木 19h30、土・日 17h30)。21€/9.50€(26歳未満)。 Théâtre la Cité internationale: 17 bd Jourdan 14e 01.4313.5050 RER-B 線 Cité Universitaire |
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