クリスマスのチーズというとヴァシュランだろう。フランシュ・コンテ地方のスイス国境に近い山地で飼われている放牧牛の、香り高く濃い牛乳から作られる。
モミの木の一種、エピセアの樹皮の輪っかがはめられ、やはりエピセアでできた棚の上で8週間以上かけて熟成される。軽く塩水で洗われた皮はバラ色がかっ
た黄褐色で、ビロードのような光沢を持ち、しわが寄っている。そして、かすかにエピセアの樹脂とカビの匂い。
皮をナイフで薄くきれいにはがすと、象牙色の身があらわれる。これを小サジですくって口に入れると、やはりかすかに樹脂の香りを持った身がとろけるよ
う。ワインは、クレピーやルセットなどのサヴォワ地方の白がおすすめ。このチーズは700gくらいから1キロ半くらいまでと大きさがさまざまだし、食べ
きってしまう方がいいので、食べる数日前にチーズ屋さんに「6人分」などと頼んでおくのがいい。適当な大きさで食べごろのものをとっておいてくれるはず
だ。 (真)