構図や色使いの大胆さ。 Paris 1400

 1400年前後のパリという、日本人にはあまりなじみのない時代がテーマだが、フランス史に疎い人も必見。息を呑むほど完成度の高い作品が多く、見ごたえ十分の展覧会だ。
 シャルル6世の治世(1380~1422)は、イギリスとの戦争の再開(百年戦争の一環)や、内戦など暗い出来事で彩られたが、1405年までは平和で、王侯貴族たちの庇護のもと、イタリアやフランドル、ボヘミアから優れた芸術家や職人がパリに結集した。彼らによって、美術工芸やゴシック建築が発展した、絢爛たる時代だった。
 当時のパリは、北が現在のrue Reaumur、南はソルボンヌ、東はバスチーユ、西はサンジェルマン・デプレまでの狭い範囲だった。そこに、金銀細工職人が600人以上いたというから、いかに工芸品の需要が多かったか、想像できる。
 新年にお祝いの品を贈るのが、当時の宮廷の習慣だった。シャルル6世の妃が、1405年の新年に王に贈ったオブジェ『Goldenes Rossl』は、展覧会の目玉。マリアと幼子イエスの前にひざまずく王の下方に、金の鞍をつけた白い馬と、手綱を引こうとする侍臣がいる。フランスではこの展覧会が初めての一般公開だ。金に宝石を配した豪華さだけでなく、表情やしぐさの妙を表した技術の高さにも目を奪われる。
 彩色挿絵本にも、優れた作品が多い。
第III室のNo.188、『Tres belles heures de Jean de Berry』は、王の叔父、ベリー公ジャンの旅風景を描いている。左半分を占める、青みがかった夢幻的な城の美しさと構図の大胆さ。
 中世の女性作家、クリスチーヌ・ド・ピザンが、王妃に自作を捧げる場面を描いた作品では、王妃の衣装と寝台とソファーの赤が、画面を支配している。壁に描かれた、ブルボン家の紋章である百合の花の金色が、もう一つの主色、青とのコントラストをさらに強烈にしている。中世末期の宮廷女性の様子を、大胆な色使いで表現した作品だ。
 彩色挿絵本は、注文をできるだけ早くさばくため、複数の職人たちが役割分担して製作した。未完成の挿し絵本を見ると、友禅染めの製作工程に似ている。こんなところに日仏文化の共通点があるのも面白い。(羽)

ルーヴル美術館:7月12日まで(火休)


Galerie Pierre

 マレ地区の北、ギャラリーが多く並ぶ一角にある Galerie PIERRE は陶磁器のオブジェや彫刻ばかりを専門に扱うギャラリー。オーナーはもともと建築家で、15年来焼物に興味を持っていたのが高じ、2000年よりこのギャラリーをオープンした。
 素焼き、磁器、七宝焼、グレ、陶器と、作家により素材は違うがすべて一点もので、常に創作性高く存在感のしっかりした作品ばかりを紹介している。また作品を繊細に扱い展示しているところが、見る側にも心地よい。茶道の茶器もその芸術性が重要であるように、焼物を好んで鑑賞する習慣があるわれわれには非常に親しみが感じられるギャラリーだ。
 現在展示されているのはエリック・アストゥルの作品。薪を使って焼かれた壷やオブジェなどは、ろくろで回したものをデフォルメし、釜の温度の調節や焼物の置き具合といった微量な加減で生まれる色合いが混ざり合っているのが特徴だ。土色トーンが主体で、作品からは「火」を感じる。6月8日からはグループ展。多数の作家が現在新作を釜で焼き上げている最中だそうだ。(久)

火~金13h-19h 土11h-19h
22 rue Debelleyme 3e 01.4272.2024


●Femmes, femmes, femmes
la feminite photographiee
女体のフォルム、ラインに焦点を絞った1860年~1960年代の写真。
6/26迄(14h30-19h/土15h-)
Galerie Hypnos : 52 rue de l’Universite 7e

●龍村光峯 (1946 – )「錦」
1905年、西陣織の初代龍村平蔵(1876-1962)が設立した龍村製織所に次ぐ龍村織物美術研究所所長。文楽座の緞帳から正倉院の浮き織の修復まで広範囲の制作。約40点。
6/26迄(12h-19h日月休)
パリ日本文化会館 :
101bis quai Branly 15e

●Gao XINGJIAN (1940 – )

2000年ノーベル文学賞受賞の中国人作家。墨の明暗が創り出す神秘的なコンポジション。1997年以降の作品。
6/26迄(日月休)
Galerie C.Bernard : 7 rue des Beaux-Arts 6e

●国立高等美術学校03年度優秀作品
卒業生107人のうち20人の優秀作品。日本人はINATSUGIが選ばれる。
7/4迄(13h-19h 月休)
13 quai Malaquais 6e

●Jacques VILLON (1875-1963)
セザンヌを意識しつつも、常にキュビスムを追究したヴィヨンの絵画、デッサンの回顧展。116点。7/8迄
Galerie Schmit : 396 rue St-Honore 8e

●Jaime SUNICO (1963 – )

バルセロナ生まれ。旅先で出会う無名の人々の顔を強烈なタッチと重厚な色彩で描いた最近作。7/13迄

Galerie Marwan Hoss : 12 rue d’Alger 1er

●MATTA (1911 – )

チリに生まれ、1930年代初期、建築家としてコルビュジエと協力。1938~48年シュルレアリストと交わり、1955年以降パリで制作。1936~44年の初期の作品約50点。7/16迄

Malingue : 26 av. Matignon 8e

●Sean SCULLY (1945 – ) 同時展

ダブリン生まれ。黒をアクセントに同系色の格子縞を組み合わせた抽象でジョイスの詩をも表現する大型作品。

-アイルランド文化センター(7/10迄14h-17h): 5 rue des Irlandais 5e

-Galerie Lelong:”Winter Robe”(7/10迄)

13 rue de Teheran 8e

●Guiseppe PENONE (1947 – )

1960年代イタリアのアルテ・ポーヴェラ運動に参加。土や木などに作家が手を加えることにより自然のフォルムを昇華。99年暮れの強風で倒れたヴェルサイユ宮殿のヒマラヤスギの大木のインスタレーションは、幹の中にもう一つの若木を彫りおこし自然を再創造。回顧展。8/23迄(火休)

ポンピドゥー・センター