Emmanuel Sammartino 花屋。メーキャップ・アーティスト。

 「庭で咲いている花は、力強く、楚々とした生(き)の美しさを持つ。ここにあるのは、そんなホンモノの花…」
 エマニュエル・サマルティーノさんは2年前、サンジェルマン・デプレに花屋をオープンした。ダークグレーの壁、黒い床、18平米の小さな店内で植物の芳香が融けあう。同じく花が好きなクリストフさんに出会い、ふたりで花の仕事をするのが念願だった。
 花が卸市場に出る前に農家へ直接出向き上質のものを選ぶ。剪定から枝の切り方も、生brut の状態ができるだけ感じられるように栽培者と相談して決める。切り花として売るために大量生産される規格通りの花ではない。
 日本の生け花でも「構成原理」とか「組み立て方」などの表現が使われるが、ふたりは、よその花屋さんが花そのものより「この花は丸形のブーケに」、「この花はこの花瓶に」と、生け方のスタイルを売ることに納得できなかった。
 バラが好き。「…つぼみから枯れるまですべての過程が美しいから。少し開いた時、翌日、その翌日と表情が違う。いっぱいに咲いた時、花びらが落ちそうな時…」。ラディゲもバラが散る情景を詠った。華やかな花だけに散り行く様が切々と感じられたのだろうか。
 エクス・アン・プロヴァンス生まれ。自然の香りに囲まれ成長し、美大へ行ったエマニュエル青年は、やがてメークの道に入り、モード界に名をとどろかせるようになった。20年のキャリアの中で一番感銘を受けたのは、『イタリアン・ヴォーグ』のためにピナ・バウシュと彼女のカンパニーのダンサーたちのメーキャップをしたこと。それは写真家ピーター・リンドバーグと初めての仕事でもあった。
 サンジェルマンは、偶然にもエマニュエルとクリストフがそれぞれ上京し初めて仕事をした場所だった。だから店もここに。モード、映画界などの面々の顧客も多いが、ここではそういう名前で飾るのはやめておこう。この店の持つ「生」の美しさで十分だから。(美)

「バラが好き。つぼみの時から枯れるまですべての過程が美しいから…」

Odorantes : 9 rue Madame 6e 01.4284.0300

アッバスさんのおすすめ
●モンマルトル散歩
アッバスさんがよく散歩に行くのがモンマルトルの丘。パリコミューンの歴史が刻まれ、画家と観光客の「色」に溢れる場所だから。「テヘランは丘の斜面に作られた町。パリは平らで、斜面は地下にある地下鉄だ」
●北ホテル
 アッバスさんの文化センター近くにある。カルネの映画にちなんだ建物の外壁は歴史的建造物だから、今でも昔の面影をとどめている。アコーデオンやジプシー音楽の演奏は地域性を感じさせるし、純なパリ下町スタイルのバーカウンターは陽気な雰囲気、10区を散策するには欠かせないスポット。

Hotel du Nord : 102 quai de Jemmapes 10e
01.4040.7878 http://paris.webcity.fr