EUが大所帯になればそれだけ悩みも増える。

 5月1日、中東欧8カ国(エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア)と地中海のマルタ、キプロス共和国の計10カ国が正式に欧州連合に加わり、一挙に15カ国から25カ国に拡大した。EUの人口も3億8000万人から4億5500万人へと20%増の欧州ビッグバン。EU各機関の公用語も11カ国語(国連は6カ国語)から20カ国語に増え、各国語を組み合わせると380通りの通訳・翻訳が必要、まさにバベルの塔。
 新加盟した国の中で、旧共産国は共和制になって15年そこそこ、生活水準はEU15カ国の40%でしかない。ポーランドなどは零細農業が産業の30%以上を占めている。これらの国が加わってもEU全体の国内総生産は5%しか増えず、拡大EU市民の平均収入は今より10~15%減退するという。さらにこれらの国の産業が国営から民営へと移行するなかで、失業率はポーランド(平均20%、若年層41%)を筆頭に平均14.6%(15カ国は平均8%)と急上昇。そして病院から裁判所まで各分野で今でも袖の下がまかり通っているというから、新加盟国へのEUの04-06年度の援助金約58億ユーロが、汚職が習慣化した社会で、はたして良心的に活用されるか。旧共産国が全体主義的官僚体質から抜け出せない限り、西欧型資本主義への移行にはかなりの時間がかかりそう。
 もう一つ、15カ国側の大きな不安は、今後、中東欧諸国から移民が大量に流入してくることだろう。英国は年間5000~14000人、ドイツは20万人が予想されているが、15カ国のほとんどが2009年まで移民制限を続行。例えばフランスは、看護婦など一部の職種にだけ労働許可を与えるよう。
 が、EUの平均賃金の1/5、労働組合も社会保障もないにひとしいポーランドやチェコなどにプジョーなど仏自動車工場もすでに進出しているように、中東欧諸国は企業税率のダンピングにより先進国からの企業誘致作戦を続けていくはず。多分野でEU内拡散化が進んでいくのは確かだ。
 2007年にはルーマニアとブルガリアも加わるというから、EUはどこまで広がっていくのか(トルコも?)、東西の貧富差による二重構造の大陸にならないか、米国に対抗すべくアングロサクソン型自由競争空間を目指すのか、社民風味の多民族社会の建設が可能なのか、10年、20年後の欧州大陸像に対する疑問が絶えないのである。(君)



D i c o

antisémitisme
(男性名詞)
 
  最近、アルザス地方でユダヤ人墓地が荒らされ、フランスでantisémitisme(反ユダヤ主義)が顕著になっていることが改めて指摘されている。ユダヤ人を排斥する行為や犯罪はune acte antisémite、une crime antisémiteという。
 ところがles Semitesは、もともとはセム語を話す西アジア起源の諸民族のことで、ユダヤ人だけでなくアラブ人も含まれる。アラブ人排斥の動きもantisémitismeといわれてもいいはずだが、現在では、もっぱら「反ユダヤ主義」の意味。そこで、イスラムのモスクが破壊されても、新聞などにはune acte raciste(人種差別的行為)と書かれるだけで特別扱いはされていない。(真)