浅野忠信主演のタイ映画『地球で最後のふたり/Last life in the universe』の登場! タイ映画といっても、製作はタイ、オランダ、フランス、シンガポール、日本と5カ国の合作。21世紀の映画作りは国境を股に掛けるのだ。
潔癖性で自殺指向のあるケンジはバンコクの国際交流基金の図書館に勤めている。なぜここで暮らしているのかといった説明はないが、物語の進行と共に、ある憶測は可能だ。世捨て人的なところのある彼だが、図書館にセーラー服姿で現れた少女が彼の目に留まる。そして彼女の交通事故の現場に遭遇してしまうことで少女の姉、ノイ(シニター・ブンヤサック)と出会う。自分の家に帰りたくない事情のあるケンジは彼女の家に転がり込む。彼女は「来週、日本に発つから片づけてもしょうがない」と言って家は散らかし放題。彼はそれが耐えられない。家は郊外の風通しの良い一軒家、事故で亡くなった妹の亡霊がそよ風にのって現れてはいたずらをする…。なんと形容してよいか? 物語を追うより、シーン、シーンのムードやディテールが楽しい映画。ラスト近く、特別ゲスト出演の三池崇史の登場も、 ファンには嬉しいサプライズ!
監督のペンエーグ・ラッタナルアーンは、『わすれな歌/Mon-rak Transistor』などですでに国際的な評価も高い有望株。浅野忠信は本作品で昨年のヴェネチア映画祭 “コントロコレンテ(逆流)” 部門の主演男優賞を獲得している。
国際合作といえば、日本も出資して昨年のカンヌ・カメラドール賞の特別メンションやゴールデングローブ外国映画賞を受賞したアフガニスタン映画『アフガン零年/Osama』(セディク・バルマク監督)もおすすめです。語られることはシビアですが、ぜひ観に行って下さい。(吉)