何を、誰を料理する? La cuisine d’Elvis

 舞台は料理好きの高校生がいちばん落ち着ける場所である台所。彼女には女ざかりでセクシーな母親と、数年前に事故で脳と運動機能に障害を負った父親がいる。老いを恐れる母親が一夜だけのつもりで連れ込んだ若い青年は、いつのまにか一家の一員となってしまい、そして娘までがこの青年と愛人関係を築き上げる。女たちのヒステリーな応酬のかたわら、夢か幻か、それとも父親自身の想像か回想なのか、麻痺しているはずの彼の体が動き始め、元気だったころのようにエルヴィス・プレスリーの物真似をしながら歌い、踊りだす。
 皮肉、ブラックユーモアのスパイスがたっぷりきいたこの悲喜劇の脚本を書いたのは、映画『リトル・ダンサー』を書いたリー・ホール。さすがイギリス人の作品、筋が通っているようで、いきなり羽目を外すエキセントリックさには度肝を抜かれ、楽しくもある。フランス人演出家のマリオン・ビエリーは、プレスリーという、話の筋書きからみれば突飛でキッチュな存在にアクセントをつける。父親=エルヴィス役を演じるジャン=ピエール・カルフォンが歌う場面は、田舎芝居と学芸会の中間のような、滑稽さと哀愁に溢れていて、見ものです。(海)

*Theare de Poche Montparnasse :
75 bd du Montparnasse 6e 01.4548.9297 火~土/20h30 マチネ土/18h 日/15h
19~34euros

● L’ami
 昨年のアヴィニョン・オフのために創作されたこの作品では、二人の天使の間に育まれた友情が主軸となる。天国では神様の目にもとまらなかったセレスタンとエルモジェンは、二人で知恵を合わせて「友情」という感情を人間に植え付けることに成功する。ただ、この友情はなかなかの曲者で、人間関係に思わぬ悪影響を及ぼし始める。結局、神様は二人を引き離し、エルモジェンは人間界へと旅立っていく。原作、演出、主演を兼任するエマニュエル・ヴァッカは、ブルーノ・アンジェリーニのピアノ生演奏とともに緩急を入れながら、天空の世界と人間界をたっぷりの茶目っ気で面白可笑しく、そして哀しく描いていく。彼の前作Ildebrando Biriboの時と同様、童心に帰ったような、新鮮な感動がある。ひとつだけ残念なのは最後のシーン。もう少し早くすっきりと終わっていたら、夢の余韻を楽しめたかも。12月末迄。(海)

*Sudden Theatre / 01.4262.3500.
※L’amiは木金土の21hに、Ildebrando Biriboは火水の21hに上演。

Dance
●Wim Vandekeybus /
Sidi Larbi Cherkaoui《 It 》
 ベルギーのアーティスト二人のコラボレーション作品。振付のヴァンデケイビュスはたとえば、人間の本能や肉体感覚など果てしなく奥深い世界をも軽快なほどに、抜群に切れのいいダンサーたちと、音楽、映像とともに見せてくれる。ダンサーのシェルカウイは、自身の振付作品では、彼自身の根源を問いながら、この社会の困難さのなかで普遍なもの、共存すること、人としてのモラル、人間の感情をバッハやパーセルのメロディーをバックにいきいきとした作品をクールに創り上げてしまう。まっ白な舞台での彼の姿と一匹のロバが印象的。一昨年のアヴィニヨン演劇祭での野外作品に映像を加えた劇場ヴァージョンになっている。(珠) 

7日~11日/20h30 11/15euros
*Les Abbesses :31 rue des Abbesses 18e



 

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