芸能界の臨時雇い怒る。

 春以来フランスを揺さぶってきた公務員の年金制度改革案反対運動に次ぎ、こんどは演劇・映画・オーディオ界の臨時雇いの役者や裏方が、彼らの特別失業制度改正案に対し反旗をひるがえす。
 劇団や映画、その他のプロダクションに1回につき半日または数日間、年に数カ月しか雇ってもらえない役者やミュージシャン、裏方など臨時雇いは全国に約13万5千人いる。経営者団体(Medef)セリエール代表に「芸人は働かずに失業手当で暮らす」といわれるくらい、彼らの雇用期間は限られている。こうした不安定な生活から彼らを守り文化事業を維持するため、68年革命によって生まれたのが、世界でもまれな芸能界の臨時雇いの失業手当だ。その数は10年で倍増、失業手当の赤字額も91年に2億2900万ユーロだったのが、02年には8億2800万ユーロと10年間で4倍に。リベラシオン紙によれば、臨時雇いの平均年収額21 150ユーロの約40%(約8300ロ)は失業手当だという。
 同制度の財政難の中で経営者団体はこの制度の改革、さもなければ廃止と強硬姿勢。6月27日の労使円卓会議で、妥協してでもこの制度を維持させるため、CGTとFOを除く3組合は改正案に同意した。失業手当の受給条件として、裏方は今までの保険加入期間12カ月を10カ月(役者は10カ月半)に短縮、その間従来どおり507時間の就労時間が必要。失業手当の受給期間も従来の12カ月から8カ月に短縮。また彼らは教師やその他の兼業もできる。そして、臨時雇いによって経費を抑えようとするプロダクションやこの制度を乱用する被雇用者の監視を強化するなど。が、現実には、国営テレビ番組の下請から末端まで大半の業者がこの制度によりかかっているのである。
 失業手当の受給条件を厳しくすることにより、ますます臨時雇いの食いつなぎが困難になるばかりか、彼らの30%(手当1日15ロ)は完全に失業保険から除外されるとし、多数組合のCGT組合員は強く抗議する。6月末以来、コメディー・フランセーズ前での座り込みや抗議デモ、各地で予定されている夏のフェスティバルで次々にストが宣言され、モンペリエ・ダンス・フェスティバルでは勅使河三郎振付けの舞踏も中止、エックス・アン・プロヴァンス・オペラ・フェスティバル(7/4-25)、アヴィニョン演劇祭(7/8-28)ほか、全国でストが続行され、中止または延期されるものが続出。
 これらの公演中止で、世界中から集まってくる観客は足留めを食わされ、地元のホテルやレストランなども年に一度のかき入れ時がフイに。そして各劇団とも長期間の準備活動が水の泡となるばかりか収益もゼロ、主催者側も契約金の弁済など、経済的損害は膨大な額に。
 大小含めて年間1~2千あるフェスティバルの中でアヴィニョン演劇祭は1947年創立以来、中止されたのは68年の時だけ。国をあげての演劇祭だけにその打撃はあとあとまでひびきそうだ。(君) 

アヴィニョン演劇祭の内訳(02年)
1480万euros  地元観光収入
  850万euros  入場券収入(予算の1/3)
  150万euros 市の援助金
52000人 現地滞在者
  700人 臨時雇い
  40  招待劇団
500  オフの劇団
(Le Monde : 03/7/02)