私は60歳、姉は66歳、友人は59歳。この三人で一週間のパリ観光を決行しました。なにしろ日本の外に出るのは初めて。ドイツのデュッセルドルフにも友人がいるのでそこで3日滞在し、列車でパリは北駅に到着。三人とも日本語以外、ローマ字を使った言葉には耳も眼も口も役立たずの旅人です。
パリで長く暮らす友だちが予約してくれた11区のホテルに着いたとき、姉のバッグに入れてあった財布が見当たらない。その中に運転免許証も入ってたのです。さてはケルンの駅でやられたのか、それとも北駅だったのか…。
翌日、友人に恐れ恐れ打ち明けたら、「またなんでパリに日本国内でしか使えない運転免許証なんか持ってくるのよ」と友だちは理解できないといった面持ち。「だってガイドブックにそう書いてあったし」と姉は申し訳なさそうにうつむく。
日本で運転免許証を再発行してもらうため、友人を通訳代わりに近所の警察署に連れていってもらいました。緊張して入っていったオフィスで、25歳くらいの若いTシャツ、ジーパン姿のハンサムなオマワリさんが笑顔で出迎えてくれました。友だちが一部始終を語ったあと、盗難届け用紙にそのオマワリさんが明細を打ち込んでくれました。
私たち日本人を相手にしたためか「ぼくは沖縄拳法を習ってます、ほら」と言いながら、Tシャツのえりをよじ開けて見せてくれたのは、なんと右肩に舞い上がる紅色の龍ではありませんか。
日本で入れ墨しているオマワリさんなんているかしら、私たちは度胆をつぶし、若いオマワリさんにどう笑いかけていいのか戸惑うばかり。
凱旋門やエッフェル塔を見る前だったので裏口から花のパリに迷いこんだ思いでした。(敦子)