パリのサンドイッチ・ワールド
フランス
フランスのサンドイッチは、具にくらべてパンの種類が豊富。バゲット、カンパーニュ(田舎パン)、パン・オ・レ(ミルクパン)、ブリオッシュ、パン・ド・ミー(食パン)など。
バゲットのサンドイッチ
パン屋やカフェでは、具のバリエーションはだいたい同じで、一番シンプルなのは、普通のハム入り “un jambon” かグリュイエールチーズ入り”un fromage”。パンには必ず無塩バターが塗られ、フランスのパンの塩加減によく合う。クリュディテcrudité生野菜のことだが、サンドイッチではトマトとレタスが一般的(きゅうりや卵が入る場合も)。この”crudité”をつけないと生野菜入りは売ってくれません。ミックスというのはハムとチーズだけの組み合わせで、具がいろいろ入っているわけではない。ブルサン(ハーブ入りのクリームチーズ)やニンジンの細切りをはさんだり、クルミパンにブルーチーズをはさんだり…ひと工夫したサンドイッチを置いているところもあるが、フランスはパン自体がおいしいので、具はシンプルな方がいい。
カンパーニュのサンドイッチ
ほのかな酸味のあるどっしりとしたカンパーニュは噛めば噛むほど味わい深い。バターの上にマスタードを塗り重ね、具は生ハムやリエット、パテ、ソーシソンなどのいわゆる豚肉加工製品がよく合う。コルニションをかじりながら食べたい。
地方色豊かなサンドイッチ
パリ市内のアルザス地方のお惣菜屋に行くと、つやつやと光沢のあるブレッツェル生地を使ったアルザス風サンドイッチがあったり、バスク地方出身者が経営するカフェではピーマン入りオムレツのサンドイッチなんてのもある。8区にあるアラン・デュカス氏プロデュースのパン+お総菜屋〈be〉では、丸パンにニースふうサラダがはさまれたニース名物、パン・バーニャが食べられた。ここのサンドイッチは時期によって替わり、値段こそ張るが(7€)、彼が吟味して選んだパン、ソース、具をうまく調和させて見事なサンドイッチを創作している。一度足を運んでみては。
カンパーニュのサンドイッチ
アルザス地方のサンドイッチ。
サヴォア地方の、ラクレットを溶かしてのせるサンドイッチ。

*フランス語で食パンをパン・ド・ミーpain de mieといい、mieは皮の内側にある白いふわっとした部分のこと。食パンは白い部分が多いのでこう呼ぶ。
イギリス
イギリスではサンドイッチがランチの定番なので、街のあちこちにサンドイッチ屋がある。パンと具を選んでその場でサンドしてくれるシステムがうれしい。パンは食パン*が主流。でもフランスでは食パンにしても食パンを使ったサンドイッチにしても、パサパサしていてとてもがっかりする。この国でおいしい食パンのサンドイッチが食べたいなら〈LINA’S〉などのチェーンのサンドイッチ屋に行くのが手っとり早い。あと食パンのサンドイッチといえば、カフェの定番メニューになりつつあるクラブサンドイッチ。こんがり焼いた薄めの食パンにチキンやカリカリベーコン、トマト、レタス、マヨネーズをはさんで三段重ねにしてあって、目もお腹もじゅうぶんに満足する。ちなみにこのクラブサンドイッチはアメリカ東部のエリート男性たちが集るクラブで考案されたものだそうです。 イタリア
フランスのサンドイッチ?と言いたくなるほど、フランスのいろんな場所で売られるようになったパニーニ。冬でもあつあつで食べられるところがうけたのだろう。ちなみにパニーニPaniniはイタリア語でサンドイッチの複数形。単数はパニーノPanino。おきまりのモッツアレッラチーズが厚めで、バジルがフレッシュだとさらに○。パスタ感覚なのか最近のパニーニ用のパンは、やたらとカラフルなものが目立ちます(ピンク色を発見!!)。モントルグイユ通りにあるイタリアンのサンドイッチ屋では一風変わったサンドイッチが食べられる。具を薄いピザ生地みたいなものでくるっと巻いてあり、注文するとオリーブオイルと挽きたてのこしょうをふりかけて、パニーニみたいにプレス機で焼いてくれる。どれにもほろ苦いルッコラが入っているのもうれしい。でも具に対してパンの割合が少ないので、生ハムなどはちょっぴり塩味がきついかも・・・。


ちょっと古い写真でフラン表示。ゴメンナサイ。


スウェーデンふうサンドイッチsandwich
suédoisもパリのパン屋の欠かせないアイテムになっている。穴がたくさん開いた平たくて薄い北欧のパンは、ほんのり甘くて、スモークサーモンや小エビ、スリミ(フランス版カニカマ)、ツナなどシーフード系の具が中心。生野菜とマヨネーズも必ず入っている。ハムやチーズの場合もパンにあわせてソフトな食感のものがはさんである。パンのやわらかさといい、具のしっとり具合といい、日本の食パンサンドイッチに一番近い気がする。
米国
ハンバーガーはさておき、ドーナツ形のパン、ベーグルを「アメリカのもの」だと思っている人が多いかもしれない。じつはこのパン、ユダヤ人が朝食に食べるパンで、特に日曜日の遅い朝食にはこのパンにバター、クリームチーズ、サーモン、玉ねぎのスライスをのせて食べるのが正統な食べ方らしい。ベーグルbagelという言葉もユダヤ語の「丸いパン」を意味するbeygelから来ている。オーブンに入れる前にお湯の中でゆでるというプロセスがあるので、特有のモチッとした弾力があっておまけにカロリーも控えめ。そんなところが、リッチなパンやサンドイッチの多いアメリカで、特に健康管理に気を使う優秀な?ニューヨーカーを中心に広がったようだ。フランスでは数年前から専門店ができ始め、少しずつだが着実に増えている。最もスタンダードな具は、米国フィラデルフィア社のクリームチーズとスモークサーモン。これはやはりユダヤのなごりでしょう。



