12月27日、新興教団「ラエリアン・ムーブメント」に所属する仏女性化学者ボワスリエ氏のフロリダでの記者会見によると、クリスマスの日、12月25日朝11時53分、米国人女性(31)がクローン女児を帝王切開で出産した、赤ちゃんの体重は3.2 kg、名はイヴ。が、教団は、DNA鑑定実施の遅延作戦に出ているようだ。 この挑発的なニュースにまっさきに怒ったのはシラク大統領、「クローン人間作りは人類の尊厳に対する犯罪」と再生クローニングを糾弾。フランスでは昨年1月、国民議会の第一読会を通過した生倫理法改正案は「両性配偶子によらない胎児作りを試みた者は20年の懲役刑」としているが、上院の可決待ち。ドイツとフランスは、治療以外のクローニングの禁止協定案を2000年秋に国連に提出したが、米国は全面禁止を主張し、英国は治療上のクローニングを認めており、国連で人間のクローニングを規制する国際条約に至るにはまだ時間がかかりそう。 この分野で各国の足並が揃わないのをいいことに、ラエリアン・ムーブメントは5年前にボワスリエ氏 (教団の”司教”)を社長にクローン人間開発会社クロネイド社を設立。が、同社はいまだかつて研究論文などを科学雑誌に発表したこともなく、各国の研究者たちは同社によるクローン人間作りはマユツバ的とかなり冷ややか。数年前に60歳の女性の出産を成功させ、2月にはクローン出産を予定しているイタリア人産婦人科医アンティノリ氏も「なんら科学的な裏付けがない」と懐疑的。 各界でクローン人間作りへの反発の声が上がるなかで1月4日、こんどはオランダのラエリアン教団支部の代表が、レズビアンによるクローン女児の出産を発表。クロネイド社は1月~2月にあと3件のクローンベビーの出産を予定しているという。ちなみにクローン費用として1件につき20万ドルを請求するそう。 ケベックに本部 UFOLAND を置き、84カ国に5万5千人の信者をもつといわれるラエリアン・ムーブメント。教祖ラエル、旧姓クロード・ヴォリヨン、58歳。歌手やスポーツ紙の記者もやったことのあるヴォリヨン氏は1973年、28歳のとき仏中部クレルモン・フェラン付近の丘陵地帯でUFOに乗ってきた異星人に出会ったという。異星人がいうには「人間は2万5千年前にElohim(ヘブライ語で神の意)によってラボラトリーで作られ地球に送られた」。ヴォリヨン氏は異星人によってラエル Raël (神の光)と名付けられる。ラエルは「地上の母親と異星人との間に生まれ、キリストの義弟であり最後の預言者」で「2035年までにできればエルサレムに”大使館” を建設したい」と宣う。 ラエルは「愛と喜び、思想と性の完全な自由」を讃える。97年に英国でクローン羊ドリーが誕生して以来、「クローン人間こそ不滅の生命」と、クローン人間作りをラエル・ムーブメントの先鋒として掲げているようだ。 将来、クローン人間からなる新興宗教団体がSFではなくなる脅威に誰しも背筋が寒くなったのではなかろうか。(君) |
仏国内のカルト・グループ(96年:173種) |