毎年春夏、パリでは期間限定でアーティストが自作発表のためアトリエを一般開放するイベントが地区ごとに開かれる。一方、普段から自宅をギャラリーにしているアーティストやキューレーターはまだまだ少数派だ。在仏12年になる桃谷恵里子さんは、そんなパリにおける自宅開放型ギャラリーの草分け的存在である。
「90年代初めロンドン旅行中に、病院やコレクターの自宅など美術館以外の場所で展覧会が盛んに開かれているのを見て刺激を受けた」。もともと日本とフランスで、カメラマンのアシスタントや産業デザインの勉強をしていたという彼女。この体験が引き金となり、当時パリでほとんど例のなかったアパート開放型ギャラリーの企画を進める。そして95年、自宅にて念願のギャラリー “Micro Exposition”をスタートした。
絵画、立体、写真など、ジャンルは問わず、参加アーティストの国籍も様々という自由なギャラリーだ。最近は桃谷さん自身も制作に加わったという実験ビデオの上映会を開催した。フランスの新聞・雑誌でも盛んに紹介され、まずは順調な歩みを続けている。
「展覧会を通して魅力的な作品に出会える時や、お客さんが作品を深く解釈してくれている時がとても嬉しい」。でもそれだけじゃない。作品案内をお客さんに必死でしているうちに、自然とフランス語が磨かれてしまったという嬉しいおまけも。(瑞)
*次回の展覧会は、11月中旬よりアルゼンチン人とスコットランド人のハーフである作家カルメラ・ウランガの作品展。訪れる前に電話予約を。
*Micro Exposition chez Eriko Momotani :
136 rue Amelot 11e
tel & fax : 01.4700.5852