Mr. le prefet Lepine
毎年、約100人の発明家が賞を手にするこのコンクールだが、「コンクール・レピーヌ」のレピーヌという名は、警視総監だったルイ・レピーヌ氏(1846ー1933年)からきている。なるほど。発明コンクール会場のど真ん中にパトカーを誇らしげに展示した警視庁のスタンドがある意味がようやく分かった。そこのおまわりさんいわく、1901年に始まった発明コンクールはレピーヌ警視総監がフランスの製造業を活性化させるために始めたものだった…。
レピーヌ氏はリヨンに生まれ、ドイツ留学なども経験した後、パリで法律学を修めた。果敢に闘った普仏戦争後は弁護士として活躍、やがて行政機関に入る。政界の渦中にいながらも、市井の人々の生活を考えていたところが英雄といわれるゆえんであるらしい。その他にもサン・テティエンヌの炭坑内の爆発事故では、真っ先に坑内に降りて救助活動をしたとか、警視総監に就任してからも現場主義だった彼は、大火事の際はいつも消火活動に参加していたとか。暴動の際には群衆を抑えるために活動しているところを、危うく銃弾を顔に受けて殉死するところだった…などの美談が綿々と語り継がれている。「火事の征服は、迅速な消火活動にあり」と考えた彼は、警報機と消火システムをパリの街角に設置させた。彼が警視総監に就任した年の火事件数は1982件だったが、彼がポストについてから20年後にはこれが20件に減ったというから凄いお手柄です。こんな彼の業績をたたえて、シテ島にある、花市場とパリ警視庁の間にある広場はルイ・レピーヌ広場と名付けられている。 (美)
★★★ 歴代の主なコンクール・レピーヌ参加発明品 ★★★
1912 食器洗い機
1916 パラシュート
1919 ボールペン
1920 点字タイプライター
1921 蒸気アイロン
1922 速記タイプライター
1924 ポータブルタイプライター
1928 電気オーブン
1930 芝刈り機
1931 ムリネックス(ピュレ器)
1932 家庭用ヨーグルト製造器1934 輸血器
1935 チャージ式万年筆
1936 給湿(調湿)器
1937 喉頭鏡
1948 コンタクトレンズ
1978 偽札発見器
1991 絵画盗難防止装置
1997 回転磁気域内石灰垢防止
1999 高さ調節可能洗面台
A.I.F.F. (Association des Inventeurs et Fabricants Français)資料より
ここに紹介した発明品の中には2002年度の発明ではないものももちろんある。この他に今年コンクール・レピーヌに出展された作品は、表紙で紹介した「電動ショッピングカート」、大臣賞に「木製連関階段」、パリ市杯「農業用オートバイ」、コンクール・レピーヌ会長賞には、各々長さ調節可能な「あらゆる地形に適合する四本卓脚」。その他、無公害「燃料電池スクーター」、のどに詰まって窒息しないための錠剤・ドロップ用の「穴」、路上フン取り「ワンワン・ボックス」、「亜鈴型ボトル」、盲人用「超音波障害物察知機」などなど。
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「これだっ!」というアイデアが浮かんだら、INPI(Institut National de La Propriete Industrielle)特許登録局へ行こう。ロゴ、名前、デザイン、アイデアの特許権を調べたり申請したりもできる。フランス国内だけの検索・権利取得から、ヨーロッパ、世界まで、調べる項目、申請数で払う値段がどんどん高くなる。