心根の優しい映画。 “L’Auberge espagnole”

 本誌 496 号に登場したセドリック・クラピッシュ監督の最新作『L’Auberge espagnole /スペインの宿 』が完成した。主演は、同監督の映画には欠かせないロマン・デュリス。主人公のグザヴィエは、大学の最終年をバルセロナ大学に編入して、スペイン語を習得しながら卒業証書も手にするという計画を立て、泣きすがる(!?)恋人のマルチーヌ(オドレイ・トトゥ)とお節介な母親を後に残して旅立つ…。
 この1年が終われば社会人、青春最後の1年をグザヴィエはどう過ごすのだろう? 結局、長距離恋愛には失敗してマルチーヌとは破局を迎える。が、世話になった現地に住むフランス人カップルの人妻(ジュディット・ゴドレシュ)とは不倫の関係に…。しかし、きっとこの1年の最高の思い出は “スペインの宿” だろう。ヨーロッパの様々な国から来ている留学生7人と、一つのアパルトマンをシェアして暮らしたハチャメチャな日々は、今後の彼の人生の糧になっていくに違いない。外国に住む私たちの経験に重なる部分もある。アメリカに留学していた監督の体験も反映しているのではなかろうか。 いずれにせよ、クラピッシュらしい心根の優しい映画だ。
 得意とする群像劇(『百貨店大百科』『猫が行方不明』等)で、ずっとテーマにしている青春模様(『青春シンドローム』~)を描く。『パリの確立』でロマン・デュリス君は子孫を残すことについて考えていたので、青春は卒業したかと思っていたけど、スペイン留学を無事に終えて大蔵省に就職したロマン・デュリス君は、体制の中に収まってしまうことに居心地の悪さを感じて逃げ出す。これがラストだ。クラピッシュの描く人物は今後もきっと、年齢を重ねても、若者の気持ち、青春の気分を失わない人たちなのではないかな? (吉)

●内田吐夢特集
 修羅場であがく人間たちを、感傷に陥ることなく、骨太なレアリズムで描いた内田吐夢の特集。*特に時間が記してない場合は19h30上映。入場料3euros。

6/25、7/6(14h):『妖刀物語・花の吉原百人斬り』(’60)田舎商人が遊女に復讐。

6/26、7/5(18h):『血槍富士』(’55)若様の仇討ちをするはめになった槍持ち…。

6/28、7/6(16h30):『大菩薩峠』(’57)

6/29(14h)、7/9:『大菩薩峠・第2部』(’58)6/29(16h30)、7/10:『大菩薩峠・完結編』(’59) 心の底に虚無を持ち、最後には狂気に憑かれてしまう剣の達人、机龍之介を片岡知恵蔵が演じる名作。

7/2:『真剣勝負』(’71)遺作。決闘が終わった荒れ野原…突然、沖山秀子の乳房の超アップ。その乳首から乳がにじみ出る。

7/3:『土』(’39)農民の厳しい生活に迫る。

7/4:『飢餓海峡』(’64)映画史上に残る大傑作。伴淳三郎が演じる老刑事が暴いていく人間の運命。三國連太郎もすごい。

7/3:『人生劇場・飛車角と吉良常』(’68)

鶴田浩二、辰巳柳太郎、高倉健、藤純子。

Maison de la culture du Japon :

101bis quai Branly 15e 01.4437.9500