2年前、東京のジャズクラブでスタンダードナンバーを歌っていた。休みをとりリヨンに遊びに来たとき驚いた。モダンジャズが盛んなのだ。クールジャズ、フラメンコジャズ、テクノジャズなんていうのもある。今まで耳にしたことのないジャズを聴いて、それならこっちで勉強してみようかと4カ月後には再びフランスへ。もちろん都会と、パリを選んだ。といっても、ここはパリに隣接するサン・トゥアン市Saint-Ouen。 友人の紹介で一目で気に入り即決。日当りがいいのと、ジャズの学校が近かったのが決め手。駅から歩いて5分、窓からサクレクール寺院が見えるのもいい。 パリ市内と違い、サン・トゥアン市では日本人にまったく会わなかった。黒人、アラブ人が多いこの周辺は住み始めたころ、さすがに夜歩くのは怖かった。しかし、駅前には週3回朝市が立つし、図書館も無料で利用できる。映画館、プールも安い。市のコンセルヴァトワール(音楽院)も近い。今では臨時にクラシックピアノをその音楽院で教えている。 台所も広く、パンやケーキを焼いて友人宅を訪れたり、招いたり。友だちの家で食べておいしかった料理を自分の家で再現して彼に食べてもらう。「何点? 」と毎回聞くが、10点満点で8点が平均点。キビシイ。唯一の満点はバナナケーキ。 夜ふと浮かんだ音楽フレーズ…急に起き出して鍵盤に向かう。昼間はもちろん、夜中に弾いても大丈夫。部屋のドアを完全に締め切ると聞こえないらしい。音楽をやる者にはとってもよい環境だ。 去年、フランス人とジャズグループ “MAH-JONG” を結成した。最近はオリジナル曲に歌詞を日本語でつけている。まさかフランスへ来て日本語で歌うとは思わなかったが、フランス人にとって日本語の音が気持ちいいらしい。 今は、コンサートに向けて練習の日々を送るサン・トゥアン市の住人です。 (佐) |
日本から持ってきたキーボード。作曲した曲を録音中です。
電子レンジと洗濯機は知人にもらいました。
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水の上の住居に移って見出した心の自由。
ブローニュの対岸、セーヌに浮かぶ船上での暮らしは23年目という4人家族。その中心はブリジットさん。娘時代もぺニシュ住まいで、ご主人のエリックさんと知り合ってから現在の中古船を、オランダの商人から買い取り、二人でこつこつ改造した。そこで、二人の子供を産み、育て上げたとのこと。 長さ30m、巾5mの船で、上下合わせて150m2の生活空間に、サロンと三つの寝室のほか、必要設備が完備。広いサロンは、旅行業の仕事で東南アジアに行く機会の多いブリジットさんが買い集めたエキゾチックなオブジェや家具で満たされ、ピアノや熱帯魚の水槽もあり、家族や友人がゆったり寛げる雰囲気だ。 「どうして船に?」という質問に「私は小さいころから極度に内気で、そこで両親は船に住まわせることを考えたの。そうしたら生まれ変わったように自由な気分を見出した」という彼女の答えが返ってきた。一家の住居は、時々電話線や水道管など地上とのパイプを断ち切り、気ままに動くことができる。”人生は旅” それも船旅ということなのだろうか。ちなみに船名は、そんな信条を反映してクロシャールCloch’Artである。(岡) |
甲板でくつろぐ一家。 左からリズ、ブリジット、マキシム、エリック。 船の絵や模型が目立つサロン。 |