パレ・ド・トーキョーがオープン!

 新しい感覚のアートセンター、Palais de Tokyoが1月21日にオープンした。”Site pour la creation contemporaine” という名のもとに、美術、音楽、映像、ファッションといったジャンルを超えた同時代のクリエーションがリンクする実験的な場所となることを目指している。
 自然光の入る高い天井や仕切りのない4000m2に及ぶオープン・スペースはとにかく圧倒的で、訪問したすべての人が同時に共有できる空間となっている。建物自体は1937年の万国博覧会の時に遡り、パリ市近代美術館の隣に位置する。
 現代の多様性を見せることを意識したこの巨大装置では、かつて美術館に足を運んだ時の時間の止まったような感覚はなく、作品の中に封じ込まれた過去の記憶を味わうのとはまったく反対の時間が流れている。つまり一人で作品の前に立ち止まる鑑賞を目的とするより、情報の提供やコミュニケーションにスポットが当たり、友人や家族と楽しみながらサロンやテーマパークを散歩する感覚に近い。
 出会いの場としての機能は、開館時間を深夜12時までとしたことや、毎日開かれるコンサートやファッションショー、セミナーなどから、また所々にいるmediateurと呼ばれるスタッフたちからも伺える。彼らは監視員でもなければガイドでもなく、観客と気軽に作品やアートについて話すために存在している。難解だと思われがちな現代美術を少しでもわかりやすく、と一般大衆をターゲットにした快適な消費システムを国がかりで作りあげるのは、「文化」を国家産業と誇る(ここではむしろ情報産業的性格が強いが)フランスらしい、といえるだろう。

 ただし、流行の先端や最新情報として作品を見せるあまり、それ以前に見たことのある作品が、またか、という印象を与えてしまうのはとても寂しい。

 また、変化し続ける有機的な構造を基本に掲げているため、展示作品も時間芸術のようにスペクタクル化してくる。観客参加型の巨大な塗り絵を壁面作品として発表している山出淳也は、自分ではコントロール不可能なパフォーマンスをプロデュース。色とりどりのクレヨンを手に無心な表情で制作する観客たちは、今という時を文字通り刻みつけていた。

 都市文化のシフト・キーのような役割として、今後の展開が楽しみだ。(礼)

*Palais de Tokyo : 13 av. du President Wilson 16e (月休)3€/5€


What is “Urgent painting”?
 お隣の誕生ですっかりクラシックな趣をもってしまった近代美術館だが、絵画に焦点を絞った不思議な題名の展覧会を開いている。絵画が映像に取ってかわられたような印象を与える最近の美術の傾向において、絵画の持つ素材感や時空間を緊急に(!)問い直す試みらしい。
 キュレーターや批評家17人からの提案を含む32人の国際的な作家の作品群は、バラエティーに富んではいるものの、それらが世界の現市場のオムニバス・アルバム的で、それぞれの絵がひとつのモデルケースからでることがないような並列展示をとっている。推薦者の存在もただ単にその作家の保証人として名前が記されているだけのようで、選択理由や彼らにとっての「Urgent painting」の意味すらまったくもってわからない。テーマがはっきりしているのなら、人数を絞ってでも各作家の仕事なりメッセージなりをもっと深く伝えるべきであるし、絵画が展示会場にて鑑賞されるべき価値を主張するなら、美術館でしかできないダイナミックな演出や作品研究などの工夫がもっとあってもよかったはずだ。
 何世紀を経ても文学では文字を諦めることはできず、舞踊の世界では肉体を捨てることができない。それと同様、一度解体されてしまったかに見える絵画も決して絵筆を折るわけにはいかない、という切迫感は全く伝わってこなかった。(ロ)

*Musee d’art moderne de la ville de Paris : 11 av. de President Wilson 16e 3/3日迄(月休)2/3/4


●〈Rouge et Or〉
16~18世紀ポルトガルにおけるバロック様式美術作品を集める。絵画、銀細工、陶磁器など。2/25迄
Musee Jacquemart-Andre
158 bd Haussmann 8e
●Cecile PARIS
室内と屋外、プライベートな空間と都市の風景、私と他人。日常の光景を対比させ、イメージを交錯させる写真作品。2/28迄
Galerie Eric Dupont: 13 rue Chapon 3e
●Miwa YANAGI(1967-)
CGを駆使した作品「Elevator Girls」でフランスでも注目された彼女の近作は「My Grandmothers」。若い女性たちにアンケート調査した「50年後の私」の結果をもとに制作された写真作品。3/2迄
Galerie Almine Rech:
24 rue Louise Weiss 13e
●〈A table au XIXe siecle〉
瓶詰め食品や「レストラン」の発明、何種もの料理が一度に出る宮廷様式から一品ずつ出されるスタイルへ、現在のフランス食文化の源泉は19世紀にあった。様々な資料やセザンヌ、カイユボットの絵画で当時の食文化を見る。3/3迄
オルセー美術館(月休)
●Jean NOUVEL(1945-)
現代フランスを代表する建築家の一人、ジャン・ヌーヴェルの回顧展。アラブ世界研究所やカルティエ財団美術館を初め、世界中にある彼の建築物や、彼が建設したバーチャル都市を、デジタル画像で見ることができる。3/4日迄(火休)
ポンピドゥ・センター 
●Antonio SAURA(1930-1998)

絵画における具象形体、画面構成、バランス、美を否定し、スペインのアンフォルメルを推進したサウラ。未公開作品を含む作品展。3/9迄
Galerie Lelong : 13 rue de Teheran 8e
●〈L’Art de la Plume en Amazonie〉
南米アマゾン一帯に住むインディオたちが極彩色の鳥の羽で作った19世紀以降の冠や髪飾り150点。3/30迄
Mona Bismarck Foundation:
34 av. de New-York 16e(日月休)
●Jannis KOUNELLIS(1936-)

戦後イタリアの前衛運動アルテ・ポーヴェラの参加者だったクネリスの回顧展。パフォーマンス、インスタレーション、詩作、絵画とあらゆる方法を用いて表現しつづけてきた60年代から現在まで、全年代の作品を網羅。3/30迄
Galerir Karsten Greve:
5 rue Debelleyme 3e
●Loic LE GROUMELLEC(1957-)
十字架を自然界に存在する形体とみなし、それをモチーフに宗教的意義を超越した聖なるイメージを表現する。3/30迄
Galerie Karsten Greve(同上)