現代文明の必然としての災害。 “Ce qui arrive”展

 事故や災害が起こるのは偶然なのか?哲学者であり、都市計画家のポール・ヴィリリオは、これらが単なる偶然の結果としてでなく、特に20世紀から猛烈な速さで発達してしまった現代文明と引き換えに、今日に生きる人々が持たされた重い必然として意識すべきだと、このエキスポジションを企画した。カルチエ財団の地下には現在、映像作家たちのフィルム作品と、台風、地震、火事、爆発事故などの世界中のニュース映像とが並列され、「事故・災害資料館」のようである。
 Artavazd Pelechianのフィルム “Notre Siecle”(1982)は、人類が空を飛ぶことを夢見続け、ついに宇宙へ発つのに成功するまでの困難に満ちた経過を見せている。また、Bruce Connerの “A Movie”(1958)はもっと速く、強くなろうと人々がチャレンジし続け、1946年のビキニ諸島で行われた原子爆弾実験の映像で締めくくられる。Aernout Mikの”Middlemen”(2001)は、世界規模の株大暴落直後を再現したビデオ作品だ。これらとともに投影されるのは、チャレンジャー号の空中爆発、チェルノブイリ事故後の関係者インタビュー、モロッコや神戸の地震、トゥールーズの化学工場爆発事故、オーストラリアの大火災などの資料映像だ。
 2001年9月11日のニューヨークを体験した何人かのアーティストたちの映像は、この「資料館」の最も新しい記録のひとつとして大きく場所を占めている。現場から2ブロック先に住んでいたTony Ourslerがリアルタイムで記録した当日の様子や、Moira Tierneyがブルックリンの自宅ロフトから撮った崩れ行くツインタワー。大規模に、複雑になる現代の事故・災害は、局部的な被害を引き起こすに留まらず、まるでそれ自身が育っているかのように、重層の空間、時間、精神に絡まり、広がっている。
 出来事そのものを直接伝えようとするニュース映像の傍らで、アート作品は細々と自己主張している感はあるが、彼らの直感が集めたイメージは、時には予見的に提示され、同時代人の集合的な声として存在しているようでもある。自分たちがどこに、どんな状況に投げ出されているのかを思い知らせるかのように。(仙)

 


1958 Bruce Conner

カルチエ財団現代美術館:
261 bd Raspail 14e (月休)3月30日迄

 

「奈良原一高」展

 日本写真界の大御所の一人、奈良原一高(1931年福岡県大牟田市生まれ)の写真展がパリ市立ヨーロッパ写真館(通称メップMEP)4階会場で行われている。長崎の近くの人工島での、坑夫の人間としての生存条件を提示し、出世作となった『軍艦島』。外部から隔離された世界の屈折した心理の時間と空間を表現した「女子刑務所」と「トラピスト男子修道院の生活」の『王国』。3年間のパリ生活で日本伝統の精神を再発見したあと、曹洞宗の禅寺で撮られた『ジャパネスク』等の日本でのルポタージュ作品。ヨーロッパ滞在中の『静止した時間』、2回のアメリカ横断旅行での『消滅した時間』、夜景の不思議な魅力を写した『ヴェネツィアの夜』などの欧米の風景写真など、100点以上の作品がテーマごとの小室に分かれて展示されている。モノクロ写真が織り成す光と影の美しい対比ももちろん堪能できるけれど、一写真家がいかに個々のテーマと取り組み、対象に入り込んで、自分の感じたものを絵にしたか。そこに奈良原一高の深い人間性を感じることができる。2月23日まで。(純)

*Maison Europeenne de la Photographie: 5-7 rue de Fourcy 4e 01.4478.7500
M。 Saint-Paulまたは Pont-Marie
11h~20h (月・火休) 入場料5euros


●Franoiis ROUAN(1943-)

女のからだの断片を再構成したフォトモンタージュ。形態を抽象にまで追い詰めた、限りなく絵画に近い写真作品。
2/22迄(日月休)
Galerie Daniel Templon: 30 r.Beaubourg 3e
●Markus RAETZ(1941-)
空間に散らばる断片や、あやふやな形の立体が、一定の角度ではっきりとした形をなす。網膜で知覚されるイメージを広義の「写真」作品として提示する。平面、立体、フィルム、インスタレーション作品など。2/23迄
Maison europeenne de la Photographie:
5-7 rue de Fourcy 4e(月火休)
●Victor VASARELY(1908-1997)
ハンガリーに生まれ、戦後幾何学的抽象造型によるシネティスムの先駆者の一人としてパリで活動。オプ・アートからポジ・ネガの互換性、色彩・フォルム単位の変換による不確定性の追求などを研究、展開したヴァザルリの作品。3/2迄
Atelier Renault:
53 av. des Champs-Elysees 8e
●Antoni TAPIES(1923-)

カタロニアの風土とその文化的政治的状況を喚起させる作品をつくり続けてきたタピエス。昨年制作されたばかりの新作、5枚の連作平面作品 “Dietari”(Journal)を展示。3/1迄
Galerie Lelong: 13 rue de Teheran 8e
●Tony CRAGG(1949-)
見慣れたかたちは切り刻まれ、変型させられ、そのものが持つ意味は次第に変化していく。70年代より活躍し続けるCRAGGの立体作品。近作。3/15迄
Galerie Chantal Crousel:
40 rue Quincampoix 4e(日月休)
●Norbert GHISOLAND
20世紀初頭ベルギーの片田舎にスタジオを構え、労働者の肖像写真を4万点残したというGHISOLANDの1920~1930年に撮影された作品。3/23迄
Hotel Sully: 62 rue St-Antoine 4e(月休)
●Otto DIX(1891-1969)
ドイツ新即物主義画家オットー・ディックスの、二つの大戦の間に描かれた約100点のデッサン。3/31迄
ポンピドゥセンター(火休)
●Louise BOURGEOIS(1911-)
高さ、直径それぞれ4メートルの巨大な樽。中にはいくつものガラスの容器に囲まれた金属のベッドが静かに横たわる。なかなか展示される機会に恵まれなかったルイーズ・ブルジョワの作品”Precious Liquid”(1992)が、ポンピドゥセンターの地下倉庫から出された。3/31迄
ポンピドゥセンター(火休)