「夏にはホラー」というのは何も日本だけの現象ではなさそうだ。昨年この時期に公開して当たった『Promenons-nous dans les bois/森へ行きましょう』という「出るぞ、出るぞ、ほら出た!」という、ただ怖がらせるだけのB級ホラーの製作会社が、今年は『Un Jeu d’enfants/ チャイルド・プレイ』で勝負を賭ける。 この映画は、その名もBEE MOVIES というシリーズの第一弾「低予算でB級精神にのっとったジャンル映画を、短編と長編の橋渡し的な意味で若い監督に撮らせる」のが主旨だ。監督のローラン・チュエルにとっても本作が初の本格的長編(前作は75分)となるが、カリン・ヴィアール、シャルル・ベルリングという信頼できるキャストを得て、作品にそれなりの風格がついた。 さて、人間にとって何が一番怖いか考えてみると … 理解を超えた訳が分からない状況に??? と思っているうちにアレヨアレヨと追い込まれ、善し悪しの判断がつかなくなり、最も身近な愛する人々までも疑わざるを得なくなり、唯一の味方らしき奴は腰砕けになり、目に見えない敵から独り身を守り、訳の分からない状況からの脱出を計るってのはかなり凄く恐い。異物に襲われる<お化け屋敷>や<エイリアン>的な恐さよりタチが悪い。『チャイルド・プレイ』は、ありきたりな幸せそうな一家4人が内部から、それも心理を揺さぶられて精神の内側から崩壊していくところがコワイ! 要するにサイコ・ホラー。しかもすべては妄想が引き起こしただけなのかも知れないし…。『リング』も『回路』も日本のホラーは “あの世” とのリンクを起点にするのが基本だが、実はこのフレンチ・ホラーも “あの世” とのリンクを起点にしている。が、展開がフレンチーなのだ。(吉) |