> 1957年から68年にかけての作品を集めた展覧会がポンピドゥ・センターで開催されている。50~60年代といえば大量生産、大量消費の波がそれまでにないほど大きくなった時期。皆生きるのに貪欲で、何でも実験的に試みようとしていた。音楽、美術、建築、デザイン、映画など、約400点の展示作品から、そんな当時の社会的ムードが感じられる。
ポンピドゥ・センターに入ったとたん、いつもと違う雰囲気に気がつくだろう。エレベーターや通路が60年代のポップ・ミュージックで溢れ、新しい文化到来の予感をポップ世代と共有したような気分になる。大衆的で、安上がりで、はかなくて、シリーズものになっていて、エロティックで、ファンタスティックで、グラマラスで…おまけに金になる。
ポップ・アートは、1957年、イギリス人アーティスト、リチャード・ハミルトンから始まった。それは実社会の外側にあったエリート芸術、抽象表現主義に対する反動であり、彼らの幻想性を批判するものだった。ポップ・アートは日常的な事物を作品に導入することで、事物として現前する作品を探求したのだった。リキテンスタインのコミックスのヒーロー、ウォーホルの意味性を省いた広告やスターのイメージ、オルデンバーグの巨大なケーキやサンドイッチのオブジェなど、極端なまでに具象的で無感情な作品がそこら中に展示されている。
60年代は多弁な時代でもあった。アメリカでは、ジョーンズ、ラウシェンバーグ、キーンホルツたちがさまざまな形の表現を試み、またヨーロッパでは、セザール、アルマンら新レアリストたちが、量産製品やその屑を作品に取り入れた。それらは時にダダイズム的であり、また消費社会に対する痛烈な批判を呈している。ラウシェンバーグや草間弥生らのパフォーマンスの映像や、ハリウッド映画を繋ぎ合わせたブルース・コーナーのフィルムも興味深い。
最近やはりポンピドゥ・センターで行われた、90年代の作品を集めた “Au-dela du spectacle” 展をどこかで思い出させるものだったが、退屈なくせに満足しきっていた90年代の精神に比べると、ポップ世代からはポジティブな強いエネルギーが感じられる。(ヤン/訳:仙)
*ポンピドゥ・センター 6月18日迄 (火休)
Oyvind Fahlstrome
写真のリズムAlair Gomes展
美術の流れにおいて写真のもつ存在感というのは独特である。その魅力を余すことなく伝えている展覧会が現在、カルティエ現代美術財団で開かれている。アレール・ゴメス(1921-92)はブラジル人の写真家で、彼の生前には開かれることのなかったフランスでの初個展である。
作品の主題は男性ヌードで、ギリシャ彫刻やロダンの作品に見られるアカデミックな男性の肉体美とポルノグラフィーに通じるエロチシズムのミックスの要素が大きい。
彼は写真作品の特徴として、絵画と違ってカメラは連続した瞬間をキャッチできる点を挙げている。ほとんどが連作の形をとり、特に「ソナチネ・フォーフィート」と題された作品の繊細な音楽性は非常に研ぎ澄まされて美しい。
全体を通じて、決して大きくないフォーマットの連続ショットの作品群、飽くまで人物中心の400点以上のイマージュはカットを重ねてゆくごとに、気付くとすっかり彼の世界に迷い込んでしまう魔力を持っている。
また、展示構成にも細心の注意が払われている。徹底的に白い壁、低めにそろえられた展示方法、タイトルやフレームへの気遣いなどは、まさに目の前に広がる水平線、白くまぶしい砂浜などを思い起こさせる。
アパートの窓から撮影された親密な空間は、時に匿名の物語をそっと垣間見ているような印象を与える。ここで繰り広げられる物語は、フィルムでも絵画でもなく写真でしかできない、フラグメントという音符を使ったリズムで構成された音楽に近いのかも知れない。(礼)
*Fondation Cartier : 261 bd Raspail 14e
5月27日迄 (12h-20h 月休)
●仏・アフリカ作家展
仏語圏週間記念展として仏3人、中央アフリカ3人、カメルーン2人の彫刻・絵画・写真作品などを紹介。4/20迄
Hotel d’Albret:31 r. des Francs-Bourgeois 4e
●彫刻家デッサン展
1906年以降の彫刻家(Gargallo, Zadkine…) 11人の彫刻のためのデッサン。4/21迄
Galerie M. Broutta: 31 rue des Bergers 15e
●CORNEILLE (1922 – )
オランダ人作家、1948年グループ・コブラの一人。パリ初公開のセラミック他、木彫、グワッシュ作品。4/28迄
Galerie Minsky: 46 rue de l’Universite 7e
●Alexis GORODINE (1944 – )
化石をテーマにしたアクリルやカーボランダム (研磨用炭化ケイ素) 版画、ミクストメディア作品。4/28迄
Galerie AVM: 42 rue Caulaincourt 18e
●Paul SIGNAC (1863-1935)
グランパレでの回顧展(5/28迄)と平行しデッサン、水彩のコレクション。5/15迄 Musee Marmottan: 2 r.Louis-Boilly 16e●Pierre ALECHINSKY (1927 – )
“Le pinceau meme”と題し、墨とデトランプ(顔料/にかわ)による、動植物の無限にからみ合う三連画作品。5/19迄
Galerie Lelong: 13 rue de Teheran 8e
●〈ピカソと演劇〉
ギリシャ悲劇ソフォクレス作「オイディプス王」のためのデッサン。6/4迄(火休)
Musee Picasso: 5 rue de Thorigny 3e
●Pablo GARGALLO (1881-1934)
スペイン人彫刻家。20世紀初頭、ピカソらと交わる。大理石裸婦像他。6/10迄(月休)
Hotel de la Monnaie:11 Quai de Conti 6e
●Claes OLDENBURG (1929 – )
スウェーデンのポップ・アーチストがユルテン元ポンピドゥ・センター館長の詩に添えたデッサン。7/14迄(14h-18h月休)
Centre Culturel Suedois:11 rue Payenne 3e
●Y.NORSTEIN / F.YARBOUSOVA
ロシアのアニメ作家NORSTEIN(1941-)と女流画家YARBOUSOVAによる童話や民話を扱ったモノクロームのアニメの原画とデッサン。未完成のゴ−ゴリ原作「外套」も。会場でビデオ上映。7/15迄(月休)
パリ市庁舎(Salle St-Jean): 5 rue de Lobau 4e
●〈RODIN en 1900〉
1900年パリ万国博のロダン回顧展を再現、彫刻120、デッサン60、写真70点。7/15迄
Musee du Luxembourg :19 rue de
Vaugirard 6e (木曜は22hまで)