●Le Robert des grands ecrivains de langue francaise この辞典は、様々な辞書を出し、その綿密さと厳格さで定評のあるロベール社が、辞書の形をとって、フランス文学—フランス語で書かれた文学—の多様性、豊かさを全面に出しながら、その総括を試みたものだ。 この辞書の大きな特徴は、単に作家の人生と作品の紹介にとどまらずに、多様かつ客観的、そして総括的に各作家の解説をしているところにある。 つまり、作家の文学理論、文体がふれられる。作品の受容の歴史が記される。鍵となる作品の細部分析が試みられる。他の作家や批評家の解釈が、しばし矛盾しながらも、その多様性を重視して引用される。そして対象作家自身の著書一覧はもとより、ビデオ・CD-ROMや主要研究文献一覧も充実している。 こうした原則に基づいた作家紹介には、いかにもロベールの辞書らしい厳密さが感じられ、作家の選択に関しても同種の多様性がみられる。確かに近現代の作家が3分の2を占め、女性作家も13人しか取り上げられていないとはいえ、フランス以外の国のフランス語作家にも目を向け、ジャンルも幅広く取り扱い、フランス文学の「モニュメント」的存在、「怪物」が中世から現代まで勢揃いしている。 日本語で「大作家辞典」と書くと、「大作家」の辞典なのに、「大辞典」と間違われそうだが、確かに、この本はごっつい。1500ページ以上というと厚さは5cm以上、ポータブルコンピューターよりも重い!しかし、200フラン程度でフランス文学史において重要な150人の作家について知れるということは、一人あたり1フランちょっと、350相当の作品が紹介されていることを考えると、一作品あたりは1フラン以下!これは買いです。フランス文学を学び、研究する人はもちろん、フランス文学、フランス語を愛する人たちにも…。(樫) |
Ph. Hamon, D. Roger-Vasselin編集 2000, 522+XVIII p., 210F |