マルセイユが舞台の人間ドラマ。  “La ville est tranquille”

 96年、ノースターで南仏なまり丸出しの人情ドラマ『マルセイユの恋/Marius et Jeannette』が一世を風靡したのは記憶に新しい。監督のロベール・ゲディギアンはその後も精力的に映画を発表してきたが、最新作『町は静か/La ville est tranquille』では、一回り大きな世界を描くことに挑戦している。一つの日常の事象を追いかける中で問題を提起するのではなく、複数の日常の事象を平行して描いている。やがてそれらが絡まって人間ドラマが醸造される。貧困とか、人種差別とか、一点重視の問題提起に留まらず、その彼方にある人間の尊厳にまで迫ろうと試みている。
 舞台は、ゲディギアンの映画を通してお馴染みのマルセイユ。同監督のミューズ (!?) 、アリアンヌ・アスカリッド演じるミシェルは、魚市場で働きながら麻薬中毒の娘と、彼女が生んだ赤ん坊を独りで抱え込んで悪戦苦闘している…。長期失業によって頑なになった夫クロードは極右の運動に傾いていく…。港湾労働者だったポール (売れっ子、ジャン=ピエール・ダルーサン) は、解雇に抗議するストの途中で仲間を裏切り、受け取った退職金で個人タクシーに転職する…。音楽による情操教育を仕事とするヴィヴィアンヌは、左翼成金 (!?) 風の夫の軽薄さが耐え難くなっている矢先、服役中に彼女に感化されたという黒人青年、アブデラマンの訪問を受ける…。町はずれでカフェを経営するジェラール (マリウスことジェラール・メイヤン) は、陰でミシェルを助ける謎の人物…。等々、たくさんの人々が奏でる人生交響楽といった趣の映画は、やがて生と死のドラマに集約されていくのだ。町は、そんなドラマを内包しながらも何事もなかったように今日も町としての営みをつづける…。(吉)

 

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