確立された北野ワールドがある。 “Brother / Aniki, mon frere”

 『Brother/Aniki, Mon frère』は、北野武監督が、役者ビートたけしを連れてアメリカに殴り込みをかけて撮った作品といった感じだ。確かに『その男、凶暴につき』や『ソナチネ』で北野武の映画に出会った頃の、身震いするような驚き、新鮮さはもうない。ここには確立された北野ワールドというか北野節というか北野テイストがある。
 ウディ・アレンが、精神分析に通うNYのインテリ層のことを繰り返し映画にし、それを飽きずに観に行く支持層を定着させたように、北野武も自分がよく知っているヤクザの世界を題材に、一つの人生観を独自の視点と独特のタッチで描きつづけて、それを毎回よろこんで観に行くファン層を今や獲得しつつある。
 ヤクザの抗争で、行き場を失った山本
(B・たけし) は、実の弟、ケン (真木蔵人) の留学先、LAに飛ぶ。ケンは学業を放棄し、今は地元のチンピラと組んでしがない麻薬のディーラーをしている。彼らの仕事振りの不甲斐なさを見るに見かねて、つい手を貸してしまった山本。一生ヤクザで喰って来た男は、他の生き方を知らない。自然と、彼を頭に日本的なヤクザの組が形成される。親分・子分、兄貴分・弟分の義理と人情の世界。組織を大きくするのも宿命。地元のチカノ系ギャングやイタリア系マフィアとのシマの奪い合いもものともしない。山本は玉砕を覚悟で闘いに挑む…。
 実の弟、日本から山本を慕って追って来る弟分、言葉は通じなくても心が通じた黒人青年デニーも山本を兄貴と呼ぶ…、 戯れる彼ら…。舞台をアメリカに移したからといって北野ワールドは揺るがない。でも、ラストがちょっと西部劇風なのは、アメリカ映画への彼の密かなオマージュなのかなー? (吉)