パトリス・ルコント監督の「リディキュール」を観ましたか。”mettre en boîte” (箱に収める=冷やかす、からかう) というフランス語の表現をみごとに映画化したものでしょう。フランス人のなかには、気のきいた言葉あそびやイメージ豊かな表現を使いながら、言葉をあやつることに相も変わらない喜びを感じる人がいますが、残念ながら、話し相手を “asseoir” (座らせる=手も足も出なくさせる) ことや、”clouer le bec” (くちばしを釘打つ=黙らせること) が目的だったりします。「箱に収める」にはテクニックが必要だとはいえ、そうすることに意地悪な喜びを感じていることもあります。その一番の犠牲者はなんといっても、まだフランス語のあやに通じていない哀れな外国人。そこでからかわれっぱなしにならないように、フランス語の “tire par les cheveux” こじつけ 的表現を、昨年に続いてもう一度勉強してみましょう。
赤ん坊は放っておくと何をするかわからないので、”jeter un oeil sur eux“ (彼らの上に目を放り投げる=目が離せない)。面白いことに、フランス人は、いつでも誰にでも片目を放り投げることはできますが、なぜか両目は禁じられています。というのも人に注意を払うのは片目で十分ですし、”garder un oeil à ce que l’on fait” (もう一つの目は自分がやっていることに気をつけている) 必要があるからでしょう。
textes et dessins : Pierre Ferragut
翻訳 : 佐藤真