狂牛病の余波が打ち寄せる。

 フランス料理の醍醐味はなんといってもアンドゥイエットなど伝統的な腸詰め類だろう。ところが、5月18日にフランス食品衛生局(AFSSA)が、狂牛病の病原体プリオンの人間への感染を防ぐため、腸詰めに使われる仏産牛の腸類を禁止する方針を発表した。このニュースに製造業者はもちろん、腸詰め愛好家は唖然。
 プリオン専門家委員会によれば、牛の腸の粘膜は、狂牛病に感染しやすいリンパ組織と神経組織からなっているので、腸を食することによってクロイツフェルト・ヤコブ病に罹る危険性が高まるという。なんでも成牛の腸は30~35mの長さがあり、腸詰めに使われるのは1.5mくらいの小腸の部分。じつはその部分にプリオンが蓄積しやすいのだそうだ。
 さらに食品衛生局は、1999年5月1日以前に生まれた牛、つまり生後1年以上の牛の腸は食品市場から排除する方針だ。しかし、製造業者にとっては、生後6年以上の牛でないと腸に耐久性がなく腸詰めには使えないので、腸詰め生産の停止処置にひとしい。そして5月17日、欧州議会も狂牛病防止策として、家畜の脳味噌や脊髄、眼球、リンパ節などを食品市場から排除する案を可決したばかり。
 もうひとつ、狂牛病が残していった大きな問題が横たわっている。1996年6月の法令で、狂牛病感染の疑いがあるか、または死因の明らかでない家畜を処分し粉末にし、焼却することが義務付けられた。それ以前はその粉末が家畜用飼料として使われたのだが、この法令により処分した家畜の粉末が急増、粉末加工工場の空き地に堆積していった。年間の消費量約330万トンにのぼる家畜のうち約44万トンが処分され、12万トンの粉末が残ることになる。が、EDF (電気公社)も炭田公社も焼却業務を引き受けず、結局セメント工場が請け負うことになったよう。先の法令が実施されると、腸詰め用の小腸部分がさらに加わり、焼却量がさらに年間約2万トン増えることになる。
 しかし、仏中央部から西部にかけて約20カ所にある粉末加工工場には、1996年以前に処分された家畜の有害な粉末のストックがそれぞれ数百トンずつ堆積し、全国でその量は5万トンにのぼる。例えば、シャロレー牛で有名なシャロレー地方の粉末加工工場の空き地には、1000トン近い動物性粉末が堆積し風雨にさらされ、少し気温が上がろうものなら腐った肉と骨の悪臭が周辺に蔓延し、堆積物にはカラスや野鳥が群がり、雨で粉末の小山から流れ出る脂が付近の小川や牧草地に流れこんでいるという。

 90年代初めに英国で、経済的効率を上げるために非加熱の動物性粉末が普及し、フランスでも、元来草食動物であるべき牛の飼育に大量に使われた。そして狂牛病の発生から、その疑いのある家畜の粉末処理問題までわずか数年間の出来事だ。

資本主義社会での競争が自然界の循環を狂わせ、そのツケが回ってきている。(君)

動物性粉末の焼却量

85 000トン (1998年)
162 000トン (1999年)
未焼却量
120 000トン→50 000トン (1996年) (2000年*)

*英国では44万7千トン+牛脂21万トンが未焼却。
(Figaro : 00 / 5/22)

 


 

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