この4月、ルーブル美術館に〈 les arts “premiers”/原初芸術〉部門が開設された。以前は “primitifs (原始)” 芸術と呼んでいたのを “lointains (太古)” 芸術といったり “premiers (原初)” 芸術といったり、まだ的確な名称が見つかっていないようだが、とにかくアフリカ、アジア、オセアニア、アメリカの最高の彫刻コレクションが並んでいる。 西洋芸術の殿堂、ルーブル美術館に同部門を設置する意見はかなり以前から出されていた。1909年にアポリネール、1943年にレヴィ=ストロース、また1976年にはマルローが主張したのだが、西洋の巨匠と “未開人” の作品を同じ場所に置きたくないというルーブル美術館の保守派や、〈原初芸術〉は科学的視点から展示すべきだと主張する民族学者たちによって却下され続けてきたという。ルーブルの展示作品は、作品の存在理由や制作背景よりも、ある美的な視点からの選択だったが、ふたりの中心人物によってついに開設に辿り着いた。ひとりは、その買い付け方に批判も出ている美術商で、展示作品の選択に当たった〈原初芸術〉のエキスパート、ジャック・ケルシャシュ。もうひとりは「他文化に対する敬意を表す(…!)」という政治的動機から、ほとんど無理やりこの部門を開設させたシラク大統領だ。2004年にオープン予定の〈原初芸術〉に捧げられるブランリー美術館 (le Mus仔 du quai Branly) は大統領の肝いり。今回ルーブルに入った作品は、4年後にまたセーヌ川沿いに引っ越しする運命にある。 フランス国内外の博物館から集められたり、寄贈や買い付けによる117点の作品は、紀元前4-5世紀のエジプトの彫像から、今世紀初頭のエスキモーのマスクまで年代も幅広い。ベナンの鉄製彫像、ズールー族の人の形をしたスプーン、バヌアツのシダでできた彫刻、アステカの羽の生えた蛇の彫刻、北アメリカ北西部クワキウトゥル族の二重構造のマスクなど、素晴らしさに驚くばかり。また、いくつかの作品はシュルレアリストたちのコレクションであったが、〈原初芸術〉が20世紀のヨーロッパ芸術に多大な影響を与えたことが手に取るようにわかる。 残念なのは、各文化圏につき展示数がごく限られているために、文化の内面を深く理解できないこと。物足りないが、やはりルーブル美術館のコレクションは美しい。(ヤン/訳:仙) |
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Les arts premiers18区に230メートルの壁画が出現する。
![]() 6月10日から24 日にかけて、18区にあるrue Ordenerに沿った230メートル の壁に、ミスティックやメナジェ、あるいはヒップホップ系のグラフィック・アーティストたちが、それぞれ個性に溢れた作品を描くことになる。 ”Murmure” というプロジェクトの一環で、公共のスペースを表現の場に変えてしまうことを目的にしている”M仁e Nature” という協会が音頭をとっている。「都会の煤けた壁はすべて、こんな企画を待ち望んでいるのです」 この企画をきっかけに恵まれていない若者たちに表現の機会を与えようと、アーティストたちと協力しながら、グラフィックのアトリエを設けた。このアトリエに参加した若者たちも壁に挑戦する。 とにかくどんな風に壁画ができあがっていくのか、期間中にこの通りに出かけて観察したい。24日はこの大壁画のオープニングパーティーで、ヒップホップのミュージシャンやダンサーも参加することになっている。(Seb.Naxa) 問い合わせは 01.4387.3820 Eメール : asso.dememenature@free.fr |
●Herbert LIST (1903-1975) 眩しい地中海の海、太陽に輝く若者たち。ドイツ人写真家の回顧展。6/11迄 Hotel de Sully: 62 rue St-Antoine 4e (月休) ●Pierre MOLINIER (1900-1976) 女の仮面を付けたエロティックなフォトモンタージュ。ポーズするのは自分自身。鏡の前でピストル自殺したという、モリニエの作品120点。6/13迄 Galerie Mennour: 60 rue Mazarine 6e 横浜にスタジオを構えて明治初期の日本の人々を撮影した、オーストリア人シュティルフリード男爵 (1838-1911) の写真約30点。6/24迄 ●Monika von WEDEL 金属や木製のオブジェが奏でる音。フォルムと音が絡まり合う。ドイツ人女性アーティスト。7/8迄 Galerie Lara Vincy: 47 rue de Seine 6e ●Marianne WEREFKIN (1860-1938) ヤウレンスキーやカンディンスキーなどと20世紀初頭、ミュンヘンのモダンアートグループ「青騎士」の一員だったヴェレフキンの回顧展。6/25迄 Musee-galerie de la Seita: 12 rue Surcouf 7e ●Otto DIX (1891-1969) 後期ドイツ表現主義作家ディックスの1920~23年に制作された版画作品。7/1迄 モネ、マティス、ロートレック、セザンヌ、ピカソ…41人の作品。7/5迄 Galerie Schmit: 396 rue St-Honore1er ●ルーブル美術館で2つの特別展 <L’Empire du temps, mythes et cr斬tion> 紀元前エジプト、ギリシャ・ローマ時代、近世、現代まで、時の概念と芸術作品の関係を見る。このエキスポのために制作されたボルタンスキーの作品も。7/10迄 <Posseder et detruire,strategies sexelles dans l’art d’Occident> 神話や実社会のなかで、男性が力を得るための道具のような役割を与えられる女性。ルネサンス時代から現代まで、アーティストたちは性の役割をどのように表現してきたのか。7/10迄 (火休) ●Antoni TAPIES (1923-) バルセロナ生まれ。タピエスの作品は常にカタロニアの風土を感じさせる。近作を展示。7/13迄 Galerie Lelong: 13 rue de Teheran 8e ●ZAO Wou-ki (1921-) 北京生まれ。戦後パリに移住。中国の伝統的な技法を取り混ぜ、幻想的な抽象風景画を描いてきた。近作を展示。7/13迄 Galerie Marwan Hoss: 12 rue d’Alger 1er ●James TURRELL (1943-) 暗闇と静寂に浮かび上がる、大きな光の平面。60年代から光を用いて表現を続けるアメリカ人作家の回顧展。このエキスポのために制作された作品のほか70点。7/18迄 Fondation Eleletricite de France: 6 rue Recamier 7e(月休) |
●Antoni TAPIES (1923-)![]() |
