『アメリカン・パワー  ミッチ・エプスタイン展』

Centrale thermique d’Amos, Raymond City, Virginie Occidentale, 2004 Black River Productions, Ltd./Mitch Epstein Courtesy Galerie Thomas Zander, Cologne
Centrale thermique d’Amos, Raymond City, Virginie Occidentale, 2004 Black River Productions, Ltd./Mitch Epstein Courtesy Galerie Thomas Zander, Cologne

 “American Power  Mitch Epstein”

 なんと時宜を得た展覧会だろうか。福島の原発事故を予想していたわけではあるまいに。原発、火力・水力・風力発電など、エネルギーと人間、自然との関わりを追ったアメリカの写真家、ミッチ・エプスタインの展覧会である。
 2003年、エプスタインはニューヨークタイムズ紙の依頼で、オハイオ州の小さな町を、町が取り壊される前に撮りに行った。大気汚染と酸性雨を引き起こした火力発電所を所有する電力会社が、賠償金と引き換えに住民に立ち退いてもらい、その後病気になっても電力会社を訴えないことを約束させたのだった。この仕事をきっかけに、エプスタインは5年間、「アメリカ社会とアメリカ風景とエネルギーの関係」をアメリカ全土で撮り続けた。この間、電力会社から撮影を妨害されることは多々あった。
 背後にアモス火力発電所が立ちはだかる静かな田舎の風景。煤塵(ばいじん)を出すアモス発電所の前のグラウンドでアメフトに興じる高校生たち。普通の生活と「エネルギー+汚染」源の隣り合わせが強いインパクトを与える。ランチョ・セコ原発のそばで水浴する人たちが写っているカリフォルニア風景は、ひとごとではない。
 呆気にとられる写真は、まだまだ続く。風力発電の風車が立ち並ぶ荒地で、水を飲みに池に集う牛の群れ。テクノロジーと、時が止まったかのような動物の日常の対比がおかしい。黒い溶岩の上に建てられた自力発電の家(ハワイ)の真ん中にヤギがいる風景には、ユーモアが漂う。エプスタインは、告発を前面に出して不正を問うタイプの写真家ではない。鋭い視点を内向させ、消化させた作風だ。
 ヴェルニサージュでエプスタインに会い、3月11日をどう捉えたか聞いた。「あの日は、写真の賞を受賞しにパリに来ていた。目の前にある美しいパリの街並みと耳にした悲惨な事故がまったくそぐわず、信じられなかった。でも、二つの現実は同時に在った。パリは美しいが、そこでだって原発事故の被害を受けないとは限らないと思った」(羽)

Fondation Henri Cartier-Bresson (HCB)

Adresse : 2 impasse Lebouis, 75014 paris , france
7月24日迄。火-日13h-18h30、土11h-18h45。月祭休。