アニメの魂を持った僕らの住まい。 Reaumur-Sebastopol 駅から20秒。25m2 / 家賃 3000F

 1978年7月、フランスで日本のロボットアニメ「グレンダイザー」(仏題Goldorak) の放送が開始された。パリ・マッチ誌は79年1月19日号で、番組の視聴率が100%に達しキャラクターグッズは前代未聞の売り上げを記録と報道し、その表紙をグレンダイザーで飾った。
 一見アパート紹介の記事とは関係ない話で始めたのは、ダヴィッドとエロディーの住まいが(彼らの生活全体が)日本のアニメ抜きには語れないからである。「6歳の時からロボットを集めてる」というダヴィッドが6歳だったのは「グレンダイザー」放送開始の年だ。
 テレビ画面のなかでブラックゲッターがメタルビーストに向かってゲッタービーム攻撃を開始すると、12m2の部屋の床がビリビリ振動する。5カ所に配置されたスピーカーを轟音と振動が移動する。窓もカーテンも閉めきって映画館のように環境を整えてのアニメ上映。画面を拡大するルーペがテレビに設置されているから迫力がある。「こんなに大きい音でも誰にも苦情を言われないなんて、すごく恵まれてる…お隣の夫婦は耳が遠いし」
 サン・ドニ通りに面したこの物件は不動産屋さんに見つけてもらったが、礼金は不要でリサーチ代800フランの支払いだけで済んだ。スーパーと駅が近く、色々な国の定食屋があるのも気に入っている。「この道は売春やセックス・ショップの中心地だからたくさんの人が〈危険〉なイメージを持っているけど、誤解だよ。ここは安全だし、娼婦さんたち、みんな優しい人たちなんだよ」。7歳年下のエロディーが横で大きく頷く。
 ダヴィッドがほとんど休日もとらずに3軒のキオスクでバイトをするのは、ロボットやロボットアニメの本、CD、ビデオ、DVD等を買うためだ。デヴィルマン、マジンガーZ、キューティーハニーなどの原作者、永井豪の作品の大ファンで、貴重な休息の時間は、アパートの空間構成の関係もあるが、テレビの真ん前のソファーベッドでテレビに向かって過ごす。日本語は話さないが日本語バージョンで観る。1年半前に入居というわりには、隅々にまでモノがビッシリ。10万フラン相当のアニメグッズの宝がこの部屋に詰まっているのだ。今、腰掛けているソファーベッドのなかにさえも。「日本のゴナガイ(永井豪)ファンとアパート交換して日本に行ってみたいナァ。僕らのアパートは狭いけど、日本人の住まいも結構小さいんでしょう?」
 エロディーもロボットを買い始め、コレクションは膨らむ一方、部屋はジワジワ狭くなる。そのうち引っ越す?「ここほど魂を持った、快適な住まいを見つけるのは難しいから…ゴナガイの家でもない限りは!…当分ここだと思うよ」(美)

passage du grand-cerf●商店街振興のために奔走する
 サン・ドニ通りをエチエンヌ・マルセル方向へ下るとpassage du grand-cerf。エロディーさんがおへそにピアスをしてもらった店や帽子、服、アクセサリーの店、カフェなどがあり、12メートル近い天井から日光が降り注ぐ気持ちいい場所だ。ただ、人通りが多く商店で賑わうサン・ドニ通りとモントルグイユ通りの間に位置するのに、客足がなかなかここまで伸びない。この状況を打破しなくては、と古物市の開催を区役所に提案したのが、ここで3年前からワインのカーヴを営むルグランさんだ。同じくパッサージュで60年代家具の店を持つファビアンさんとこの案を発展させ「デザイン蚤の市」を実現させた。毎年5月と10月の第1週末に開催され、サン・ドニ、モントルグイユの道を繋ぐように60年代家具の市が出る。3回目の去る5月6~8日もパッサージュは人で溢れた。他にはない蚤の市としてパリジャンの頭のなかに定着したようだ。パッサージュ協会の会長を務めるルグランさんは「これからはパッサージュだけでなく、自分の店も頑張らないと…。地中海沿岸のワインをますます充実させていきたい」と言う。6月後半、7月13日にもイベントを考案中。楽しみだ。(美)
*La Cave du Grand-Cerf : 1 passage du Grand Cerf 2e 01.4028.1240