既製品にちょっと手を加える。
トリップは、牛や子牛の胃腸のことで、スーパーや肉屋で、煮こごり状態になっているカーン風トリップtripes la mode de Caenが売られている。すでに柔らかく煮込んであるから温め直すだけでいい、という便利な食品だけれど、お酒を足したり、醤油をちょっと垂らしたり、
やっこに切った豆腐を加えたり、刻みネギをたっぷり散らしたりすれば、これはビックリ、日本の味。お酒がほし~い。コット・デュ・ローヌのような赤ワインにももちろん合う。
ニシンのおろし身を燻製したものがパックになってスーパーに並んでいる。これをマリネして冷蔵庫に入れて置けば日持ちのいい肴になる。まず、2時間くらい牛乳に浸して塩抜きする。さっと冷水で洗って水気をぬぐい、テリーヌの型や小さめのバットなどに、玉ネギとニンジンの輪切りを挟みながら重ね合わせ、コショウの粒、ローリエの葉、丁字、タイムの枝を散らし、落花生油あるいはオリーブ油で覆う。冷蔵庫に2日間くらい寝かせておくと、ニシンとハーブがなじんでおいしくなる。ジャガイモのサラダと組み合わせれば、代表的なビストロのアントレですネ。
ガチョウ、カモなどの肉をその脂肪を使って煮て缶詰、瓶詰にされたコンフィも、温め直すだけという便利食品だが、やはりちょっと手を加えておいしい肴にしたい。カモの砂肝のコンフィconfit de gésiers de canardを買ってくる。脂肪ごと鍋にとって、ゆっくりと温め直したら、砂肝だけをとりだす。脂肪は捨てずにとっておくこと。ジャガイモをソテーしたり、テリーヌに入れたりと使いみちが広い。食べやすい大きさにそぎ切りにし、フライパンでソテーする。ジュッジュッーといってきたら、シェリー酒のビネガーvinaigre de xerèsをさっと振りかけ、コショウをきかせ、フリゼなどのサラダの上に置けばできあがり。マディラン、ボルドーなどのコクのある赤ワインで。
新カブを一口大に切り、好みの辛さの塩水に漬け、押しをして半日。よく絞って水気を切ったら、マグレブの唐辛子ペースト、アリサで和え、おろしニンニク少々を加え、パセリを散らす。キムチに似た風味。チュニジア系レストランのお通し、”ケミア” の一品だ。
サヤ入りのソラマメを1キロ買ってきて、サヤから出し、塩ゆで。最後にクミン・パウダーをまぶす。これもケミアの一品。アニス風味のオサケ、ロゼ、ビールなどで。
アンディーブを二つに割ってからザクザクッとはすに切って、ゴマ油で炒め、しんなりしたら、オイスター・ソース少々を加えるだけ。アンディーブの軽い苦みとソースの甘みが抜群のコンビを作る。
マグレブ系食料品店のオリーブは種類が豊富。緑、ふっくらとした黒、しわしわの黒、タイムやローリエ風味、ニンニク風味、唐辛子入りの超辛、と20種類近くが並び圧巻だ。スーパーで瓶詰しか手に入らなかったら、エルブ・ド・プロヴァンスやパプリカ、クミパーティーには手でつまめる肴がいい。
ピンク色に着色され瓶詰めになって市販されているタラマは、あまりタラコの味がせず、どちらかというとマヨネーズという感じ。せっかくのパーティーなんだから、がんばってひと味違う自家製タラマを作ってみよう。大きなスーパーかギリシアの食料品店で燻製タラコoeufs de cabillaud fuméeを買ってくる。これを100グラム、皮がついていたら皮をはがし、小さく切り分けすり鉢ですりつぶす。食パン3枚は、耳をとってからあらかじめ牛乳に浸しておき、手で絞ってからタラコに加えて、さらに均一になるまですっていく。ここまでの作業、すり鉢がなかったらミキサーです。おろしたニンニク1片を加えてから、オリーブ油大サジ4杯、レモン1個分の絞り汁を、マヨネーズを作る要領で少しずつ交互に混ぜ入れていく。カナッペにしてつまむ。オリーブ油やレモンの量は、好みで調節してください。
ロックフォールチーズ75グラム、その半量のフレッシュチーズfromage blanc、ハサミで細かく切ったシブレット大サジ1杯をミキサー、あるいはフォークの背を使って混ぜ合わせる。これを密閉できる容器に詰めてから冷蔵庫に12時間ほど入れ、全体の味をなじませるが、食べる1時間ほど前に冷蔵庫から出しておくこと。これもカナッペにして、シブレットの葉で飾りたい。どんな飲み物にも合う味だ。
種が抜いてある黒オリーブ80グラム、油漬けのアンチョビー30グラム、ケイパー小サジ1杯分を、ミキサーやすり鉢を使ってなめらかなペースト状にする。これを大きなお椀にでもとり、コショウを多めに挽き入れ、オリーブ油大サジ2杯とレモンの絞り汁少々を、マヨネーズを作る要領でフォークを使って丁寧に混ぜ込みながら練り上げていく。軽くトーストした食パンに塗れば、南仏気分。