今日はとても風が強く、さっきバタンという音がした。暮れの嵐で屋根が傷み瓦でも落ちたのかと心配になった。いや、それはちゃんと閉まっていない雨戸が壁にぶつかる音だった。窓から向かいのあなたの家を見ると、風がひと息また激しく吹きつけ、あなたの寝室だった部屋の雨戸を押し広げ容赦なく壁に打ちつけ、雨戸の枠が板の部分から離れかけている。
ジャック、あなたがいつも心を傷めていた息子たち(五人)は、やはりあなたが心配していたようになりつつあります。母親が借金を抱え、銀行が光熱費の自動引落しも拒み出しているのに、高校生の次男はかなりの費用がかかる自動車学校へ通いだし、三男の非行はつのるいっぽう、二人の坊やも毎日おもちゃをねだり母親は甘やかし放題。あなたが懸命に歯止めをかけていたのが今はそれもなくなり、息子たちは優しすぎる母親につけこみ、彼らはそうとは知らずに自分たちの家族の零落を招いています。
父親であるあなたが家族の中でひとりぼっちになっていたのを、私たち夫婦は知っていました。いつも遠慮がちなあなたがある晩遅く顔を出し、私が用意したティザンヌを飲みながら主人とひとしきり息子たちのことを話していましたっけ。あの晩のあなたは寂しさの化身のようでした。
去年九月のある日、あなたの遺体が川で見つかりました。親が息子の育て方に失敗し、四二歳で死に追い込まれるなんて…。でも子供の問題、それ以前に夫婦の間に亀裂があったのでは。子供たちはその亀裂のすき間からすり抜けていってしまったのでは。
あれから数カ月過ぎた今でもあなたが逝ってしまったとは思えません。あなたは、癒しようのない悲しみを私たちに遺していったのです。(ポワチエ、b・P)