温かい豚肉の煮込み料理を食べたあとに味わいたい、とても冬らしいチーズがカンタル。オーヴェルニュ地方、カンタル県の標高700m~1000mの山地で作られている、チーズの祖といってもいいような古くからある牛乳チーズだ。低温の湿ったカーブで2カ月から6カ月かけて熟成されるが、熟成次第で味がずいぶん違うので、チーズ屋さんは “jeune ou vieux?”と聞き返してくるはずだ。その「お年寄り」は、濃灰色の皮がすっかり厚くなってデコボコし、赤褐色のヒビが大理石色の身に食いこんでいる。ねっとり舌にまとわりつくような質感で、したたかなうま味がある。柔らかな味が好みの人は「若者」を選びます。パンはやはり滋味豊かな田舎パン、ワインは、同地方のコット・ドーヴェルニュの赤とかボージョレなんかがほしい。郷土料理のアリゴには欠かせないし、おろしてからジャガイモとベーコンのグラタンに入れたりするとひと味ちがったおいしさ。