ロングラン、5カ月目。 Pour un oui ou pour un non ナタリー・サロート原作 / シモーヌ・ベンミュサ演出


 突然、長年の友人が自分から遠ざかる、訳が分からない。何があった? 「rien。 友人は答える。さらに問いつめる。「大したことじゃない」それでも聞きたい。原因は、あるとき自分が、「C’est bien, caと、友人に言ったことだという。この「ca」のせい? その「ca」が問題ではなく、軽く引き延ばした「bieeen」と、その後の空白も問題だという。余計に訳が分からない。繰り返される問いの果て、友人からはようやくそれらしい回答が得られるがすでに、「rien」と「ca」で始まった会話は、「幸福」と「死の闘い」の話になっている。言葉の一つの極限から反対の極限へと、語調の激しさも伴って、友人は「いって」しまっている。その後、沈黙の訪れととともに、ようやく(?)「人間的」コミュニケーションが生まれる。が、今度は逆にその友人が言う、「人生って、これだな」の一言が新たな騒乱の発端に…。
 ヌーヴォーロマンを代表する作家、サロート原作のこの芝居において、「小説ではイメージや、文体のリズムで表しているもの」が、舞台では見事に「対話そのものの中に現れて」いる。この現れているものとは、単に、古い友人がお互いに溜めていた不満の爆発だけではなく、たった一つの言葉からドラマは始まるということだけでもない。この芝居の対話、そして沈黙から感じられるのは、それなしには人間関係が成り立たない言葉というものが、すでに「ドラマ」を孕んでいるという現実、つまり言葉自身が内包している「ちから」である。この「ドラマ」からは、悲劇も喜劇も生まれる、端的に言ってしまえば、この芝居の面白さとはこのシェイクスピア的幅広さにある。が、何よりもこの芝居、その対話は、フランス語を学ぶ者、言語(つまり人間関係の基盤)に関心のある者に、「言葉」の深さと強さを考えさせてくれるだろう。

   (岳)

Comedie des Champs-Elysees :

15 av. Montaigne 8e 01.5323.9919

4月4日まで。火~土/20h45 、土/18h、

日/17h。110F~200F / 学割100F!


●Le Legs
 社交界でのつきあいをのぞけば、これまで気にとめたこともなかった女性オートンスだけれど、彼女と結婚すれば莫大な額の遺産が手に入り、そうでなければ彼女に賠償金を支払わなくてはいけない…という遺言を受け取って、侯爵の心は揺れ動く。なぜなら、侯爵はひそかかに伯爵未亡人を思い、オートンスのことなど胸中にもないのだが、やはり賠償金を払うのは惜しい。おまけにその伯爵未亡人は再婚しないという噂もあるから、心が決まらない。侯爵を演じるのは、映画”Dieu sait quoi”で主演したドニ・ポダリデスで、この優柔不断な男がよく似合っている。一方オートンスは、侯爵以外の男性シュヴァリエを愛しているのだけれど、彼の財力のなさを考えると、侯爵と結婚するほうが無難かもしれない、と思っている。
 いずこでもいつの世でも変わらない複雑な男女間の感情を、上流階級特有の気取りと洒落と軽やかさで描くのが”マリヴォー風marivaudage”だが、この芝居もそのひとつ。本心を明かさない主人たちにかわって、核心をついた発言をする使用人たちに導かれながら、男女4人の恋のゆくえを追ううちに、 気持ちのいい完結となって幕が下りる。1時間10分という長さもこの軽さにぴったり。演出はジャン=ピエール・ミケル。(海)
*Comedie Francaise – Studio :
Carrousel du Louvre 3/24日まで。月~土18h30。
45~80F。当日売りのみで、開演1時間前から発売。
●L’Heure Verte
 「緑の時」とは緑色のアブサント酒のグラスを囲んで過ごす時のこと。老いた詩人ヴェルレーヌは、友人カザルスを相手にしながら過去の恋愛を思い出す。ランボー、妻マチルド、娼婦たち…。
 「愛した女は別の男を愛し、愛した男は女たちに奪われた…」グラスを重ねるうちに、アブサントの酔いの中へ吸い込まれていくヴェルレーヌの吐き出す言葉に、私たち観客たちもいつのまにか酔わされている。
 ロジェ・デフォセの脚本をニコラ・バタイユが演出。(海)
*Theatre de la Huchette :01.4326.3899


 

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