詩人を演じるのはドニ・ラバン。96年には同じTh脂tre du Rond-PointのSalle Renaud-Barraultでロマーヌ・ボーランジェと共に「ロメオとジュリエット」を演じたが、今回は地階にある小さなほうの劇場で演じる。俳優ドニ・ラバンはカラックスの三部作で「アレックス」を演じて以来、映画活動よりも演劇においてその才能を発揮している。96年にはCite Internationaleでノルウェーのノーベル賞作家Hamsunの”La Faim”、昨年はLe Trianonでの “Neron”(ネロ皇帝)など、舞台俳優としての彼は「狂気」を言葉と体で演じられるまれな俳優である。 ”Giacomo le tyrannique” における狂気は、精神病のそれを越えて、詩人の、創作の、そして「生」の狂気である。街にはコレラがはびこり、詩人を気づかう友人のアントニオとその妹は詩人を危機から隔離しようとするが、彼の狂気は止まらない。詩人の生家で草稿を管理している妹のパオリナは正気を失いかけている…。これらのコントラストのなか、詩人の狂気、ドニ・ラバンの演じる狂気は、誰にも止められない。そして第三幕では、舞台そのものが文字通り炸裂する。 映画的な始まり、シンプルな舞台で演じられるこの芝居は、最終幕で「舞台」そのものが崩れていく。落ちついて座っている余裕もなく、芝居の中に入り込むには強烈すぎる。芝居が向かってくる。観客にとっては衝撃だ。この狂気を止められるのは死、あるいは芝居の終り?(岳) *Theatre du Rond-Point : 2bis av. Franklin-Roosevelt 8e 01.4495.9810 水木金土/21h 火/19h30 日/15h30 60~180F 12/20まで。 *パリ在住のドニ・ラバンファンの皆さんに。1月26日、Theatre Moliere-Maison de la Poesieでドニ・ラバンによるランボーの詩の朗読があります。01.4454.5300 第二次世界大戦直後にユダヤ人夫婦が経営する縫製工場で起こる様々な出来事が描かれていく。 逆境にもめげない人間の楽観的な姿勢と暖かさがこのジャン=クロード・グランベルグの芝居の素晴らしいところ。演出はジルダス・ブルデ。 *HEBERTOT : 01.4387.2323 ● La Legende des siecles ヴィクトル・ユゴーの真の才能は詩才だ。この詩才、一言でいうなら「荘厳」である。バッハ的な荘厳さだ。創世、そしてアダムからの人類の歩みを天への語り・叫びで語るこのユゴーの偉大な詩は、ミシェル・ド・モーヌによって見事に演じきられ、言葉の迫力が最小限の舞台美術の中で最大限に伝わってくる。 *Theatre Moliere-Maison de la Poesie 01.4454.5300 12/20まで。 ●Woyzeck 少し頭の弱いヴォイツェックと身体を売って日銭を稼ぐマリーの恋愛悲劇(ゲオルグ・ビュヒナーの原作)が、近代的な舞台美術とヒッチコックを意識した映画手法を使って描かれていく。フェイドイン・アウトで場面を変える方法ははじめは新鮮に感じられても、度重なるとだんだん「暗闇の中で待たされる時間」に飽きがくる。アイデア倒れになりかかったところを役者たちの演技に救われ たというところか。アンドレ・エンゲルの演出。 *Theatre de Gennevilliers : 01.4132.2626 12/19まで。 |