インタビュー
ミシェルさんはケーキを提供。
● パリの SELの会員で社会学者、スマイン・ラシェールさん。
「SELは平均85名の会員を有している。会員の過半数は、交換を通じて新しい人間関係ができることを望んでいる。パリでは、ほとんどがさまざまなサービスの交換で、知識の交換はまれである。それに対し、農村地域では、物の交換の方が多く、都会の SELより活発な活動を行っている。女性の方が男性よりも加入率が高い (60%/40%)。参加者の50%は、同時間のサービスを交換し合っている。SELは経済法則の不条理さに抗するひとつの反応で、ケインズ経済学のローカルなレベルでの再発明である。SELは生産システムではないから、商品社会の競争相手としては存在しない。個人間のつながりを社会的に管理することを基盤とし、経済的連帯を目指す”学校” であるから、SEL の限界を批判するよりは、その教育的な豊かさに注目すべきである」
エルヴェさんはシミュレーターで飛行機の操縦を教えている。
●小さな町や田園地帯に接している新しい農村地域では、SELはひとつの解答である。たとえば、ロワール川河口に面する人口4万4000人のサン・ナゼールでは、スーパーやハイパーがダンピングをやっているので、農家の人は、生産物を売って収入を得ることがとてもむずかしい。SEL は、フランソワさんにとっての無視できない解決方法となった。
「私は、野菜や生花を提供して車と交換したり、増築のための基礎工事をやってもらったりした。学校の教師である私の妻は、近所の子どもたちの宿題を手伝い、その見返りに、暖房用に木を切ってもらったり、数時間アイロンをかけてもらったりしている。最初のうちは、正直いって、なにを提供していいかわからなかった。両者の間で何をやってもらいたいかがハッキリしていないと、曖昧な部分が残り、それが誤解を生んだり、論争のもとになってしまう。でもそれが人生だからね。しばらくすると、自分に自信ができて、個人としての責任を意識するようになる。SELのおかげで、お金がなくたってこの腕や時間があるんだ、ということがわかってくる。要するに、SELは、かつて存在していたような、まだ形が定まっていない経済の仕組みなのだ。SEL は、”自由 liberte”経済に続くもので、”博愛fraternite!”経済がいつか誕生する前の”平等 egalite”経済といえるだろう。 RESは市場経済外にあって、私たちをずっと豊かにしてくれる。私はレイアウトの知識をスペイン語の授業と交換してるが、今はもう少し時間があるので、日本の太鼓を習いたいと思っているけれど、パリでは可能かしら」
RESは、70年代に小学校の女性教員によって創設された。フランスで350の支部を数えるが、ひたすら教育の領域にとどまっているという点が、SELと異なる。共有したり、伝えることができる知識を誰でもが持っている、というのが基本的な考えで、助ける/助けられる、能動的/受動的といった対立関係が少しずつなくなることを目指している。交換の価値は、”学習時間” の長さで計られる。アンリ・ド・ディジョンさんは、定年退職後は自由時間ができたけれど、自分の知識を役立てることができない。そこで RES に加わることにしたという。
「私は看護夫だったので、生物学や医学部の学生を助けることができるし、病気の人にアドバイスすることもできる」
*パリの13区、18区、20区やパリ郊外に、Réseaux d’Echange de Savoirs (知識の交換ネットワーク) の支部がある。 (95年1月15日発行のオヴニー345号を参照)
毎年9月末に ベルヴィルの大通りでLa Fête des Savoirs が開催される。