10月3日の土曜日、11区のラ・ロケット通りにあるパリ市所有の建物で、数百人の会員を持つパリ地方の SEL の総会が開かれた。一日中続いたその集まりは、SEL (地域交換システム)とは何かを知るためのよい機会だった。
午前中の集まりは会員に限られていたが、午後は一般に公開され、交換について考えるさまざまなアトリエに参加することができた。
くつろいだ雰囲気の中で知り合いになって意見を交換するだけでなく、BLE (Bourse Locale d’Echanges 地域交換市場) が開かれた大きなホールでは、物々交換も行われた。
上機嫌でややババ・クール (68年世代風) 的ではあるが、真剣な 、時には “学究的な”集まりは、ブラジルのオーケストラのリズムで幕を閉じた。
文・構成 : ベルナール・ベロー / Photos : Gabriel Fabre / 訳 : 佐藤真 SELの歴史貨
幣なしで交換するという考え方は新しいものではない。産業革命初期、1830年から1834年にかけて、イギリスの空想的社会主義のパイオニア、ロバート・オーウェンが、労働紙幣という形で実験している。その後は、1930年代の経済大恐慌の際、オーストリアにおいてローカルな規模でさまざまな試みがなされた。
こうした試みは、1980年代初め、カナダのバンクーバーで、LETS (Local Exchange Trading System 地域交換商業システム) という形で再現した。このシステムは1985年ごろにイギリスで発達し、現在は2万以上の SEL を包括する400の LETS が存在する。世界的に見れば、1000あまりの交換システム網が存在しているといわれる。
こうしたシステムは、最初は都会で発達したイギリスやカナダと異なり、フランスではまず農村地帯で SEL が誕生した。最初の SEL は1994年、南西部のアリエージュ県にある人口2万人のミールポワ町で陽の目を見た。
SELってなあに?
協会として運営され、同じ地域に住んでいる数十人あるいは数百人の会員に、地域それぞれの交換価値の単位を媒体にして、さまざまなサービス、知識、品物を交換することを可能にする。SEL はあくまでもローカルな組織で300人の会員を超えることはまれである。
では物々交換?
いいえ。物々交換だと、交換したい2人が、同時に、ほとんど同じ価値の物を交換しなければならないが、SELでは、交換価値単位が設定されているので、より柔軟な交換が可能になる。すなわち、さまざまな人の間で、さまざまな機会に、価値の異なる物や知識を交換できる。
* 双方向の交換ではなく、多方向の交換だ。
ヤミ労働?
いいえ。会員同志が、定期的ではなく時々それも短時間助け合う限りは、ヤミ労働とは見なされない。