ルルーシュ節が結構快感だった。 『Hasards ou Coincidences』 監督 : クロード・ルルーシュ N° 426 1998-11-15 クロード・ルルーシュという監督の作品を、いつ頃からか色眼鏡で観るようになった。多分、日本で当たった『愛と哀しみのボレロ』が嫌いだったからだ。何故って、あの、登場人物が沢山いて、エピソードが重なり合って、手持ちカメラを振り回して (実は観客は船酔い状態で気持ち悪くなっているのだが)、それでドキュメンタリー風にリアリティーに迫っているのだとも言いたげに、その流麗なる似非リアリティーを得意げに観客に突き出してくる手法=ルルーシュ節が鼻についたからだ。以来(彼は多作なので1年に1本位で新作が登場するが)まじめにフォローしてこなかった。 最新作は『Hasards ou Coincidences』”運と偶然の一致” とでも訳せば良いのか、いかにもルルーシュらしい題名だ。重い腰を上げて色眼鏡をかけて観に行った。ところが意外にも今回はまんまと(不甲斐なくも目頭を熱くしたりして)彼の手法に乗せられてしまったのだ。アレッサンドラ・マルティネス(監督現夫人)が演じる、愛する男と一人息子を一度に失った世にも不幸な女性が主人公。彼女に残されたものは一台のヴィデオカメラだけ。幸せの絶頂にいた時と不幸が起こった瞬間が記録されている。彼女は息子が抱いていた“少年の夢”をそのカメラに収録する供養の行脚に出る。が、不用意にもこの大事なカメラを盗まれる。この盗難カメラを偶然手にした男(注目に値する新顔、マルク・ホローニュ)は、中に残されていた映像が気になって持ち主を探し回るが、もちろんなかなか会えない…。でも大丈夫。この監督はオプティミストだから、ハッピーエンドが待っている。監督得意の、時制を解体して再構築するペースに素直に身を委ねたら、今回は結構快感だった。 (吉) Recommandé:おすすめ記事 シネマテークこども映画教室 アンヴァリッド中庭で屋外上映会 世界的映画スター、アラン・ドロンさん(88)きょう葬儀。 『サミュエル』10歳少年版、”親愛なる日記”。 【シネマ】「前世に私は日本人だった可能性があります。」『Here』バス・ドゥヴォス監督インタビュー 【シネマ】『ナポレオン』97年ぶりに蘇る先駆的な映像表現。