“恐竜”を葬り21世紀に向かうドイツ。

 1982年以来16年、その間にミッテランと二人三脚でEU通貨統合を推進し、9年前のベルリンの壁崩壊後、東西統一をなしとげた”恐竜”ことヘルムート・コール首相(68)。先のドイツ総選挙(9/27)でついに、コール首相が率いたキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が社会民主党(SPD)に大敗、コール首相は16年間暖めてきた首相の座を去っていく。1949年アデナウアー政権以来歴代首相が不信任によって辞任したのに対し、今回のように首相が国民の審判によって退陣するのは初めて。戦後世代は、ナチの刻印は祖父母までと、50年前の過去を葬りコール体制からも脱皮し、21世紀のドイツの将来を戦後派シュレーダー氏 (54) に託したのである。
 ベルリンの壁が崩壊したとき、コール首相が旧東独市民に資本主義による経済躍進の夢を抱かせたものの”東西”のギャップは広がる一方。東側の下部構造再建のために西側はすでに1兆マルクをつぎ込んでいるのだが、失業率平均11% (全国400万人超) に対し、東側は20%に達し、住民の失望感は深まるばかりだ。その中で、旧東独では元東独政権党の後身、民主社会党(PDS)や極右勢力が伸びており、ドイツ統一後の政治的経済的なツケがコール首相に回ったといえる。
 新首相内定のシュレーダー氏 (ニーダー・ザクセン州首相)は、1944年同州の田舎に生まれた。父親はその直後に戦死、母親は再婚後家政婦として働き5人の子供を育てる。14歳から金物屋で働きながら夜学に通い、大卒後弁護士になる。1978年にSPD左派マルクス主義者として社会主義青年同盟書記長を務め、80年代には平和運動やエコロジー運動に賛同し核兵器の設置や原発にも反対したが、90年以降は妥協姿勢を強め、SPD右派として”プラグマティスト(実用主義者)” “経営者のパトロン”とも評される。元雑誌記者で20歳年下の夫人は4人目。また、同選挙で47席を獲得した90年連合・緑の党は原発の即時廃止を主張しており、SPDと連立するうえで彼らがどこまでシュレーダー氏の現実主義路線と妥協していくかで緑の党内の現実派と硬派が対立しそう。
 一方、仏側は、今まで築いてきた仏独主導のEUが、シュレーダー氏の内政優先の姿勢により弱まりはしないかと不安を隠しきれず、9月30日、シュレーダー氏をパリに招き「EUの柱は仏独中心」であることを彼に再確認させ、クギをさしたばかり。
 来春にはボンから旧首都ベルリンへの首都の引越しが始まる。EU全体が新生ベルリンとその主を見守っているのである。

(君)


 

ドイツ連邦議会新議席数 (定数 669)
298 社会民主党 (SPD) 40.9%
245 キリスト教民主 / 社会同盟 (CDU/CSU) 35.2%
47 90年連合・緑の党 6.7%
44 自由民主党 (FDP) 6.2%
35 民主社会党 (PDS) 5.1%