サルトルが50年前に書いた戯曲。LES MAINS SALES

 自らの手を汚さずに、政治を司ることができるか?理想と現実のギャップから生まれる絶望をどのように克服するか?第二次世界大戦後、実存主義を築き上げたサルトルの戯曲「汚れた手」が、その創作50周年を記念して、初演の場である10区のアントワーヌ劇場で11月初めまで演じられている。
 第二次世界大戦中、ドイツと協定を結びソ連に宣戦布告した、バルカン半島に存在すると想定される国で起こる無産階級党の党首ホードレーの暗殺事件。犯人は、体制になびく党首の行動に釘をさそうとする一派が、秘書として送りこんだ若い党員ユーゴだった。 現実を真っ向から見据えるホードレーの信念と人柄に次第に惹かれていくユーゴだが、彼を売国奴とののしる同志への忠心と自ら掲げる理念が邪魔をして、素直にそのことを認めることができない。一方、政治運動に没頭してきたホードレーは、ユーゴ夫婦の若い一途さに当惑する。
 苦虫を噛み潰したような表情の持ち主ジャン=ピエール・カルフォンは、自信家で、皮肉な現実を達観するホードレーを最高にうまく演じてみせる。カルフォンをとりまく役者たちに物足りなさは残るが、金持ちの息子の繊細さと弱さ、そして同志であるべき無産階級へのひけめを見事に表現しているユーゴ役のヤニック・ドバンにも拍手を送りたい。演出はジャン=ピエール・ドラヴェル。

(海)

*Theatre Antoine :
14 bd. de Strasbourg 10e 01.4208.7771 火−土/20h45 土/17h 日/15h30
80~260F


● Festival d’Automne a Paris
 毎年バラエティに富んだプログラム構成で人気を呼ぶこのフェスティバル。去年の日本に続き、今年は中国の諸芸能が紹介される。演劇で楽しみなのは、リュック・ボンディが演出するフランス古典劇の十八番『フェードル』、自らの映画作品を舞台劇として演出するジャック・ドワイヨンの “La Vengeance d’une femme”、映画作家で写真家でもあるレイモン・ドパルドンの本を劇化した “La Ferme du Garet” 、映画作家でもあるカナダ人演出家ロベール・ルパージュの “La Geometrie des miracles”など、暇と予算の続く限り見逃せない演目が並ぶ。パトリス・シェローやミシェル・ピコリが参加する、国立演劇学校生徒たちの稽古風景もぜひ覗いてみたい。
プログラムと予約 : 01.5345.1717

●「ミツコ」
 青山光子は、明治7年東京に生まれた。19歳の時に、自宅の前で落馬したオーストリア人クーデンホーフ伯爵と運命的な出会いをし、さまざまな障害を乗り越えて、当時としてはまれだった国際結婚に至る。渡欧後、7人の母となり、32歳の時に夫に先立たれる。そして第一次世界大戦…。こうした激動の時代を、風土・習慣のまったく異なる国で生き抜いたミツコ。そんな彼女の生き方を演出家の大間知靖子と女優吉行和子が、一人芝居の形で上演する。
15、16日/20h30、17日/17h30
120F/80F (学生)

*Maison de la culture du Japon :
101 bis quai Branly 15e
M: Bir-Hakeim 1.4437.9500


●バロックサーカスの新作「人間」
 「Ningen」というタイトルはあまりにも漠然としているけれど、実のテーマは「三島由紀夫」。第一場面から神風特攻隊員が躍り出て、軍服姿のミシマと般若の面を被った白装束の狂鬼とが交差するかと思うと、ランドセルを背にした少年キミタケと祖母とのスケッチも入り、三島の美の世界とともに彼が自決に至るまでの「人間」三島を、強烈なハードロックをバックに表現。でもこれはどこまでもサーカス、息を呑む曲芸やアクロバット、ロープを使った空中回転が観客の頭上で繰り広げられ内容ともにユニーク。

11月1日迄 (水~土/20h30、日/16h)
110F/90F  予約は 0803 075 075
Espace Chapiteaux :
Parc de la Villette M! Porte de la Villette