最新映画情報 N° 419 1998-07-01 ● CRUMB 78回転レコードから流れるブルースとラグタイムの調べ。ソフト帽にチョッキ、突っかけサンダルのロバート・クラムが瓢々と街を行く。フランス移住を目前にして、絵本やBDに憑かれた少年期、アメリカBD界・イラスト界の寵児であった70年代から現在までを、彼が家族や友人たちと語る。この印象的なドキュメント・フィルムは、アメリカの埋もれた佳作映画を紹介する “Inedit d’Amerique” シリーズの一本として、上映されている。 冗談のように笑いながら語られるクラムの半生は、戦後アメリカの証言でもある。熱に浮かされたようなアンダーグラウンド文化、心を病んだ兄弟たち、父に代表される旧アメリカのモラルとの葛藤。話す時も彼は絵を描く手を休めない。この手が彼を狂気から遠ざけたのか。撮影後、兄のチャールズが自殺したことを告げる最後の字幕は衝撃的だった。 (由) ● LE DINER DE CONS フランス人のパーティーの仕方で特殊なものがある。各人が「こいつはアホや」という人を見つけて、本人には言わずにパーティーに誘う。パーティーでは各人が連れてきた「アホ」に話をさせ、誰が一番の「アホ」を連れてきたかを競うという「理性」の国フランスらしい「知的」なパーティーである。(別バージョンで男同士がそれぞれ「ぶす」な女の子を連れてきて…というフランスの男の子らしいたいへん「ロマンチックな」ものもあるという。) いったいどんなパーティー? フランス人のいう「アホ」とは?なぜこの映画が公開10週ものロングランを続け、Titanic に次ぐ観客動員数があるのか? 謎の映画である。この謎が解けるか? 笑えるか? すべてはあなたがどれだけフランス人を理解しているかによる…ミステリアスなフランスコメディー映画…ミステリアスなフランス人…確かに笑える… (岳) ●ラ・ヴィレットの野外映画館 7月17日から8月30日 (22h) にかけて、星空の下、ラ・ヴィレット公園の芝生に寝転がり、大スクリーンに映るスターの冒険に息をのむ。入場無料だが、長椅子と毛布を借りると40フラン。結構寒かったりするのでセーターを忘れずに。 7月中の主なプログラム 18日 : スタンリー・ドーネン監督の『雨に唄えば』。どしゃ降りの中、ジーン・ケリーが恋人への愛を歌い踊るシーン! 19日 : 鬼才ジョン・ブアマン監督の『脱出』。週末のカヌー下りが悪夢に転じる。21日 : アントニオーニ監督の『情事』。モニカ・ビッティのアンニュイな美しさ。26日 : ジョン・ヒューストン監督の『アフリカの女王』。男まさりのキャサリン・ヘプバーンと酔っぱらいのボガートの掛け合いが見もの。 28日 : ルネ・クレマン監督の『太陽がいっぱい』。青い海、太陽、殺人、ドロン。 Share on : Recommandé:おすすめ記事 【第18回キノタヨ現代日本映画祭】映画を介した日仏の文化的対話へ。名優・役所広司の特集上映も。 【シネマ】ショーン・ベイカー『Anora』公開。『プリティ・ウーマン』への30年後の返答。 【Cinéma】根源的な映画の喜び、オディアールの新たな代表作『Emilia Perez』。 【シネマ】70年代日本のウーマンリブを語る『30年のシスターフッド』。上映とトークの会(無料) 話題の政治劇 『クレムリンの魔術師』ベストセラーが舞台に! 【シネマ】円熟の秋のミステリードラマ 『 Quand vient l’automne 』