映画という想像の世界と現実を混同して起こる事件を耳にすると、セックスだけに敏感な日本とは違って、暴力的な作品にも年令制限を行うフランスの姿勢に共感を覚える。暴力的な殺人シーンを作る映画のプロたちは、作品を面白くするためにと、時には過剰に無責任に暴力を提供するが、実際に事件が起こった時、その責任はいったい誰がとるのだろう? アカデミー賞発表当日のハリウッドで、最優秀作品賞にノミネートされた作品の監督ボブは離婚訴訟中の妻、生意気な娘、プロデューサーに囲まれて落ち着かない様子。その夜、晴れて受賞を遂げたボブが元ヌードモデルのパメラを口説いて家まで連れてくると、ボブの映画に影響されて連続殺人事件を引き起こす若いカップルが、彼らが崇拝するボブに是非会いたいと留守宅に忍び込んでいた… この皮肉な劇中で常に問われるのが「誰に責任があるのか」ということ。映画の作り手と見る側、殺人犯と彼らを取材する報道側、離婚訴訟中の男と女、子供の教育…他人に責任をなすりつけながら、自分の名声と利欲を考える。この人間の醜さがブラックな笑いたっぷりに描かれていく。さらに皮肉なのがオスカーを獲ったボブの作品名『普通のアメリカ人』で、ボブの対面する「異常な」若いカップルは、ボブが「普通」と呼んだ登場人物から影響を受けているのだ。 この作品の原作者ベン・エルトンは Mr.BEAN の製作にも参加したユーモアの名手。ステファン・メルデグの演出もテンポがいいし、趣味の悪いビバリー・ヒルズあたりにある豪邸の雰囲気たっぷりの美術、そして音響も凝っている。そしてなにより役者の一人一人がはまり役を演じているのがいい。 (海) |
*LA BRUYERE : 5 rue la Bruyere 9e 01.4874.7699 火−土/21h 土/17h30 120F~210F |
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● AGATHA 姉と弟の禁じられた愛を描くM.デュラスの劇。愛することを恐れて弟から遠く離れようとする姉と、姉から離れられない弟ふたりが語り合う思春期や母親の思い出の奥には誰にも邪魔のできない愛の世界が。コメディー・フランセーズの役者ふたりの抑えた演技と無駄を省いた美術がデュラスの世界を忠実に再現している。6/27日迄。 (海) |
*STUDIO THEATRE : Carrousel du Louvre 内。 月火水金土 /18h30 65F / 80F 1時間前より切符が買えます。 |