
(左)どうやってこんなところに? 作品を残す「場所」もアーティストたちにとって大事な要素。(右上)トゥールーズ出身の女性アーティスト。よく見ると髪の毛がレターになっている。(右下)解読不能な文字。作者の名前も意図も、全くわからないものもある。
社会性の強い作品
グラフィティアートが発展した、その先に 「ポスト・グラフィティ」と呼ばれる政治性の強いメッセージを含むアートが存在する。今では「ストリートアート」と聞いて、そういったものを想起する人も少なくないはずだ。
2000年代になると、ストリートアートは単なるタギングのイメージが薄くなり、社会的な主張をする表現方法だという理解が深まった。有名なイギリスのアーティスト、バンクシーは今やストリートアートが社会に対する強い拡声器になることを証明した第一人者。
今、どのようなテーマが街なかで表現されているかを見れば、世相や流行などを理解することができる。そんなリアルな「街の声」を写し出すメディアの一つとさえ言えるかもしれない。
最近のパリでは、人種やフェミニズムなどをテーマに社会に訴えかける作品を見ることも少なくない。匿名かつゲリラ的に行う表現活動だからこそできる、強い主張などもあり、的を得たシニカルな風刺などは、通りすがりの人間だけではなく、今はネットを介して多くの人に見られることもあるため、その思想の拡散力、影響力も馬鹿にはできない。

導火線に火をつけて、
家父長制を爆発させろ!
— 社会派アーティスト「JR」
フランスの社会派フォトグラファー兼ストリートアーティスト、JR。大きなモノクロの人物写真を使い世界中にどのような人々がいるのかを見せながら、アイデンティティとは何かを問いかける。テーマを決め計画的に作品設置を行う。パリ市も彼の活動を認め、2004年以降は彼のプロジェクトは、市の許可のもとで行われている。今年4月、彼の育ったパリ郊外Montfermeilの団地の壁に住民175人を写した巨大なコラージュ写真を張るプロジェクトを成功させた。今年のカンヌ映画祭ではアニエス・ヴァルダと共作で彼自身の活動を追ったドキュメンタリー映画「Visages Villages」をコンペティション外で発表。6月28日フランス公開。

175人がそれぞれ自分の役を表現したドラマ仕立ての見応えある壮大な作品。写真家のJRは被写体が自然であることが彼の作品において重要だと語る。
