Q:お客さんは地元の方が中心ですか?
高橋:はい。パリじゃないので、地元の方が来れる価格帯にしています。パリみたいにたくさん日本人が来てくれるなら、もう少し高くてもいいんですが。ディジョンで日本人を相手にしようと思ったら、1日1組、2組しか入りません。ワインを1本2本必ず開けてくれる価格にして「安くてよかったな、また来よう」って月に一度来てくれるお店です。高くて美味しいのは他のお店に任せて。
Q:常連さんが多いですか?
高橋:6割常連。夏は旅行者の方が多いですが、普段は6~7割が地元のお客さんです。なので、テロがあった時も売り上げがずっと落ちないで伸びていますからね。発展させるのは難しいですが、固定のお客さんが来てくれるのはありがたいですね。そのぶんメニューは少ないので。安くて旬のものを。それが一番理にかなっています。
Q:仕入れはどうしていますか?
高橋:基本的にレストラン用の業者用を使っています。野菜なんかはマルシェで旬のものが安く買えますし、お肉は白ワインで有名なシャブリから取り寄せられます。鳩や鴨、フォアグラも近くで手に入りますし、この界隈で大体揃う。海産物はブルターニュから。最初来た時は今より大変でしたが、だいぶ便利になりました。変わったものはないですが、変わったものを出す必要もないと思うので。
Q:現地のものにこだわりはありますか?
高橋:できるだけそうしようと思いますが、鴨なんかは現地で探すより、産地から仕入れた方が安い。できるだけフランスのものを使うようにしていますし、近ければ近い方が良いかな、と思っています。ただ、そこにこだわって、無駄に変なことをする必要はないのかな、と。フランスのものが一番いいかはわからないし、もしかしたら天候が悪くて美味しくない時期もあるかもしれない。そこは気にしません。
Q:シンプルさを意識していますか?
高橋:難しいことをするよりは、より楽な方を取ります。結局自分の首を絞めるのは自分じゃないですか。難しいことをやるとだんだんきつくなるのがわかっているので。だったらしない方がいい。いかにストレスだらけの世の中で解き放たれるか。それを考えています。楽に越したことはない。仕事以外にも苦労することはたくさんあります。
Q:料理では他のシェフとの違いや、“日本人らしさ”を意識していますか?
高橋:いえ、特に日本人っぽくという意識はしていないですね。自分が食べたいものを出す。普通の料理で十分違いは出ているはずなんです。我々にもわからない違いが。だからわざわざそれを出そうって意識することはないですね。勝手に日本人のアクセントは付いているはず。外国人が一生懸命に日本料理を勉強して作ると、どこか違う感じになるじゃないですか。それと同じ。たまに日本っぽいもの、ハンバーグとか出す時はありますけど。お客さんに聞くと、軽いから胃にもたれない、火入れが良いとか言われるし、そういうのが日本っぽさのかな、って思います。気楽じゃないですか。いい加減はダメですが“いい加減”はOK。
Q:確かにいただいていて、どのお皿も自然と美味しくいただけました。
高橋:重くもないし、食材のフレッシュ感があると思うので。そういうところが違うのかな、と。自分の料理は決して自分が評価するものではないと思っていているので、あまり自分の料理は食べないのですが。誰がどう思っているのかというのは聞きますけど、それに対していちいち答える必要もないと思っています。気に入ってくれたら、また来てくれればいいし、気に入らなければ他のお店に行けばいい。全部気にしていると疲れるじゃないですか。
Q:ワイントとチーズもとても充実していますね。
高橋:ワインは多数のストックがあります。1er cru やGrand Cruはまだ出さないようにして、熟成させてから出す。ワインが好きなんでしょうがないんです。美味しいものを出したいし、飲みたい。けれど安く。それをやるなら自分で熟成させるしかない。古い年代のものを買うと高いけど、新しいものなら安く買える。変なワインは買っていませんし。
Q:ワインもチーズも、将来お店を開くために勉強されたんですか?
高橋:はい。チーズ屋の輸入業とディジョンのシャンパン・バーで働いたのも、将来自分のお店を開く時に絶対に必要になると思ったからです。歳を取ってからそんなことはできないから。料理の稼ぎってたかが知れているんですよ。朝から晩まで働いても、席数とメニューで大体決まってしまいます。でも、ワインを開けてくれると売上が2倍にも3倍にもなる。世の中のワインは100€のものもあるし、5,000€、10,000€のワインもある。でも、料理にそこまでの幅はない。正直水商売だと思います。楽じゃないですが、稼いでいかないと経営は大変。いかに飲み物を変えていくか。今も時間があれば、毎週月曜日は試飲に行っていいワインを探しに行きます。
Restaurant So
Adresse : 15 rue Amiral Roussin , 21000 DijonTEL : 03.8030.0385
アクセス : M° Ranelagh
URL : www.n41.fr
火〜土 12-14h/19h30-21h30 昼メニュー:15€と18€ 夜メニュー:23€と35€