629人の移民を海上で救出し、イタリアとマルタ共和国から受け入れを拒否されたNGOの船「アクアリウス」が17日、スペイン東部のバレンシア港に入港した。フランスがイタリアを批判し緊張が高まるなど、ヨーロッパで移民問題が再び外交問題としてクローズアップされている。
同船は「SOSメディテラネ」と「国境なき医師団」が運営。6月9日から10日にかけてリビア沖で移民を救出し北上したが、マルタやイタリアに受け入れを拒否され、スペインで政権に就いたばかりの社会党のペドロ・サンチェス首相が受け入れを提案した。バレンシア港では移民たちは喝采とともに迎えられた。スペイン政府によると629人のうち、80人が女性、11人は13歳以下の子供で、主にスーダン、ナイジェリア、エリトリア、南スーダン出身。炎天下で1500kmの旅路となったため、144人がやけどなどのため、病院で手当を受けた。
イタリアはこれまで海上で救出された多くの移民を受け入れてきたが、極右政党とポピュリズム政党の連立政権が立ち上がり、政策を転換したばかりだった。マクロン大統領は、船がフランス領海のすぐ近くにいたのにも関わらず入港を提案せず、コルシカ島の一部議員が船の受け入れを呼びかけたのも認めなかった。そのマクロン大統領が、イタリア政府の対応を「冷徹で無責任」などと批判したため、 イタリアのジョゼッペ・コンテ首相は「移民問題に目をそむけている国から偽善的な説教を受けたくない」と返し、両国間の緊張が高まった。
18日に発表された世論調査によると、アクアリウスを受け入れないという選択を、56%のフランス人が「良い選択」だったと答えている。海路でヨーロッパを目指す人は後を絶たず、23日には、ドイツのNGOの船「ライフライン」が239人、デンマークのコンテナ貨物「アレクサンダー・マークス」が移民113人を海上で救い、24日現在、どちらもイタリアに上陸する許可を待っている。
6月28、29日には移民問題が再び主なテーマのEU首脳会議が開かれた。24日には加盟国の一部が非公式に集まり事前協議を行ったが、厳しい移民政策を進める東欧諸国が欠席するなど、解決策を見出すにはほど遠い状況だ。リベラシオン紙は24日、「移民:欧州のクラッシュ(衝突)テスト」と表紙に掲げ、難題の前に崩壊しかねない欧州を憂えた。(重)