グリマルディ城美術館
古い町並みの坂道を登っていくと、高い丘の頂上のグリマルディ城美術館に着く。レーニエ・グリマルディ公が1300年頃に建てた中世の城で、民族博物館だ。上階は現代美術の展示スペースで、展示品は定期的に変わる。ここの見ものは、1930年代のアイドルだった歌手のスージー・ソリドールを有名画家たちが描いた40枚の肖像画で埋められた部屋だ。金髪で「ギャルソンヌ」と呼ばれるオカッパ頭の彼女は、当時の流行の最先端を行く女性だった。親交があった藤田とドーヴィルの海岸で写っている写真もある。藤田が描いたソリドールの肖像画は、この展示室でひときわ目立つ、モデルの中身以上のものを引き出した作品だ。ソリドールは1960年から城のそばに住み、自宅にキャバレーを開いた。幼い頃、隣の家に住んでいたガイドのジャン=マルクさんは、「いつも自分の歌のレコードをかけていた。家には文化人がたくさん集まっていた」と思い出を語った。
カーニュの町
グリマルディ城周辺、中世の趣が残るエリアにはレストランや高級ホテルがひっそりと佇み、アーティストや彫金職人のアトリエが並ぶ。この丘から町の中心の商店街へと下ると、別世界のようだ。漁船が出港し、港付近の魚屋にはその日の朝に獲れた魚が並ぶ。最近は気候温暖化のせいで、紅海から上って来た獰(どう)猛な魚もある。