エマニュエル・マクロン新大統領の閣僚人事が5月中旬、発表された。右派共和党の若手議員エドゥワール・フィリップ氏が首相に抜擢され、経済、会計相にも共和党の政治家を任命する一方、外相、内相には社会党、法務、EUに中道政治家を配置。半数は民間登用し、超党派をアピールした。
エドゥワール・フィリップ首相(46)は、任命時はル・アーヴル市長で国民議会議員も兼務。共和党の中道派アラン・ジュペ氏を大統領選候補として支援していたが、今年1月に同氏が党内予備選挙で敗退してからはフィヨン候補を支援、フィヨン候補が被疑者となってからは支援を取り下げていた。共和党からは他に、サルコジ政権下で農相だったブリューノ・ルメール氏が経済相、34歳でトゥルコワン市長のジェラール・ダルマナン氏が予算相に任命された。
社会党からは、前政権の国防相ジャン=イブ・ルドリアン氏が外相、リヨン市長でマクロン氏を政治運動立ち上げ時から支援していたジェラール・コロン氏が内務相に就任。今年1月からマクロン氏を支援していた中道政党モデムのフランソワ・バイルー党首は、法相に。同党からは欧州議員シルヴィー・グラール氏も軍事相に登用された。環境相にはテレビの自然番組の司会者として人気を博し、環境問題に取り組む基金を設立した脱原発派のニコラ・ユロ氏を起用。
選挙戦の公約通り、半数の大臣は民間から政治経験のない人物を登用。その分野の専門家を配置した。保健相には医師で国の医療諮問機関のトップだったアニエス・ビュザン氏、文化相には出版社アクト・シュッド社長のフランソワーズ・ニッセン氏、スポーツ相にフェンシングの元金メダリスト、ローラ・フレッセル氏。全体の男女比は約50%ずつ。
メディアはこの大胆な人事を「何でもやってのける」(18日付ロブス)、「マクロン世代」(18日付ル・ポワン)などと伝えた。
旧来の左右の派閥主義を超えた政治という公約実現のため、長年二大政党だった共和党、社会党に手を差し伸べた閣僚人事だが、従来のくくりで政治活動を続けようとする両党の政治家たちは、閣僚入りした元同輩を裏切者と糾弾している。しかし総選挙を前に、この二大政党が大きく揺さぶられたことは明らかだ。5月中旬に発表された世論調査では、6月の総選挙で、マクロン氏の新政党「共和国前進」は過半数を獲得する見込み。(重)