自然のなかで仕事がしたかったから、プロヴァンスへ。
ヴェロニク・ブランさん
世界140カ国で事業を展開する大企業の管理職を辞め、プロヴァンスで起業したヴェロニクさん。
マルセイユから60キロ、ヴェルドン渓谷にある小さな村に住み、標高800メートル以上の高地にだけ育つラベンダーを栽培。100%ナチュラルのコスメブランドを立ち上げた。
初めての農業。
「パリ生まれパリ育ち。でも、自分をパリっ子と意識したことはなかった。常に広いスペースと空気と変化が必要だったから」というヴェロニクさん。
大学で生物学を修めたものの研究室にこもるのがイヤで、旅ができる貿易の仕事に就き、ヨハネスブルグ駐在などを経験。パリに戻ってからも世界規模のビジネス旅行会社で働き、昇格もした。けれど当時は若く、女性ということもあり、昇格にも限界を感じ、その仕事を一通りやり尽くしたと思った。
旅もいいけれど家庭も築きたい。会社を作りたい。そんな時期に出会った彼と自分の計画がピッタリ合って2005年に辞表を提出。6カ月後には結婚指輪、パリのアパートも売り、お腹の赤ちゃんと一緒に南仏へ。地元でも栽培する農家が少なくなっていた種類のラベンダーを栽培し、蒸留所を構え、エッセンシャルオイルを作るほか、ボディケア用品を作るように。
農業は、技術と経営、機械を使うなど様々なスキルを要する。学校へ行って、農業の上級技術者免状(BTS)をとり、アロマセラピーの養成講座を受けた。あとは実地、先達に話を聞いて仕事を覚えた。「機械が故障するたびに直しながらメカを理解した」。
毎朝、山を愛でるしあわせ。
農業は初めてのパリっ子。でも、幼い頃から自然と接してきた。「森に行けるから」ガールスカウトに入っていたし、ボタンの花が咲き、ブドウ畑、菜園、果樹園が3千平米ある祖父母の田舎の家で週末やバカンスを過ごした。それが今につながっている。
100%自然のコスメティックを作るのは、15年前はまだ珍しかった。「科学的な基礎知識がなかったら、この仕事はできなかったと思う。でも作るだけではダメ、売らないといけない。多国籍企業時代に学んだ経営管理やマーケティングの知識が役に立っています。輸出手続も難なくできた」。
アルジャンス山合いの村落は、住民が10人ほど。パンを買うにも車で30キロ走るか、隣人に分けてもらわないといけない。「村の人たちとはよく話もします。地方にはまだ『ボンジュール』って挨拶する人たちが残っているんですよ。これは些細なことのようだけど、すべてが違ってくる、大切なこと」。
離婚後は、ラベンダーの栽培から、収穫、加工、販売までひとりでこなしている。新しいスタッフを雇い、生産チームを組むのが今、最優先のプロジェクトだ。
「生活のなかで何を優先させたいかが大切なのでは。移住して収入は10分の1に減りましたが、前と同じくらい働いている。でも毎朝、山を愛でられる幸せ。毎日が違う。何より、自由がある生活です」。
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